物書きにとって喉から手が出るほど欲しいであろう、「芥川賞」と「直木賞」。
小説「逆行」で第1回 芥川賞の候補となった太宰治は落選後、選考委員だった川端康成の選評に激高し、「刺す」「大悪党だと思つた」などとする文章を発表したほどである。
大文豪 太宰治がそこまで欲しがった芥川賞が2019年1月16日(水曜日)に発表される。
上田岳弘「ニムロッド」
町屋良平さんの「1R1分34秒」
直木賞
真藤順丈「宝島」
芥川賞と直木賞
純文学の新人に与えられる文学賞である。
直木賞とは
無名・新人及び中堅作家による大衆小説作品に与えられる文学賞である。
ということであったが、現在はキャリア関係なしに与えられる。
しっかりとしたすみ分けがあるとは言え、両賞の境界が曖昧になることがあるらしい。
純文学の新人賞として設けられている芥川賞であるが、大衆文学の賞として設けられている直木三十五賞(直木賞)との境界があいまいになることがしばしばある。第6回(1937年下半期)直木賞には純文学の作家として名をなしていた井伏鱒二が受賞しており、直木賞選考委員の久米正雄は「純文学として書かれたものだが、このくらいの名文は当然大衆文学の世界に持ち込まれなくてはならぬ」と述べている。のちに社会派推理作家として一般に認知された松本清張は、「或る『小倉日記』伝」で1952年下半期に芥川賞を取っており、これはもともと直木賞の候補となっていたものだったが候補作の下読みをしていた永井龍男のアドヴァイスによって芥川賞に回されたものであった。
そもそも文学と大衆小説の境が曖昧なのでこれも仕方がないコトだと思われる。
とても個人的な境界線を言うと、文学はリアル、大衆小説はストーリーである。
- 文学はいかに魅力的で読者を惹きつけるリアルを書き上げるか
- 大衆小説はいかに魅力的で読者を惹きつけるストーリーを書き上げるか
――である。
人間の一生で一回はとんでもない想像だにしないデキゴトが起る。
それは幽霊を見たとか、運命的な恋愛とか。そう言ったことを騙りを交えて語るのが、大衆小説。
人間の一生で細部にある普段焦点を当てられないようなところを、丁寧に書き上げたのが文学。
と、とても個人的価値観だが、そう思っている。
選考会場「築地・新喜楽」
物書きを目指す者にとって、この場所は1度は訪れたい。――少なくとも私は訪れたいと思っている。
東京都中央区築地4丁目に所在する料亭。「日本三大料亭」および「日本二大料理屋」の1つに数えられている。
著名人としては伊藤博文、五島慶太、佐藤栄作などが利用したらしく、特に伊藤博文は、初代女将・伊藤きんと姓が同じということから伊藤博文も当料亭を、屋号が「喜楽」だった頃に贔屓にしていたらしい。
1955年(昭和30年)頃から習慣的に芥川賞、直木賞の選考会場として使用されるようになり、1961年(昭和36年)以降は全て当料亭内で開かれるようになった。
この理由として、「口の堅さで定評のある」点が好感されたことも指摘されているが、当料亭が選考会会場として使われ始めた頃に、両賞を主催する日本文学振興会の事務局を擁する文藝春秋が同じく銀座界隈に本社を構えていたことからとも伝えられている。
例年、1階で芥川賞の選考会が、2階で直木賞の選考会が、それぞれ開かれている。
この選考終わりをどきどき待って、いずれはこの選考会で意見を言えるようになりたいものである。
痛烈な選考会
その選考はなかなか痛烈らしく、毎年、選評を読んで、ひどいことを言うなあ、と思ったものである。
実際、横山秀夫氏の『半落ち』が第128回の直木賞選考会で「落ちに欠陥がある」と言われ、受賞できなかった。
そこで指摘された“欠点”だけがひとり歩きして、ミステリー界・ミステリー読者たちの立場を悪くすることを懸念した横山氏は、“自分の作品には、指摘されたような間違いはない”と主張。
しかし直木賞側からの反応はまったくなく、同氏は、以後一切直木賞とは関わりを断つことを、平成15年/2003年3月31日『上毛新聞』のインタビューで宣言しました。
この他にも過去5度、直木賞候補に選ばれている伊坂幸太郎も「今は執筆に専念したい」として辞退している。
「執筆に専念したい」という理由だが、実際は過去5回の選考で、否定的な意見にうんざりしてしまったのかもしれない。
とはいえ、名誉ある賞で受賞作は当たりだらけなので、受賞作の決定を楽しみに待ちたい。
候補作一覧
芥川賞
上田岳弘 | ニムロッド | 群像 | 12月号 |
---|---|---|---|
鴻池留衣 | ジャップ・ン・ロール・ヒーロー | 新潮 | 9月号 |
砂川文次 | 戦場のレビヤタン | 文學界 | 12月号 |
高山羽根子 | 居た場所 | 文藝 | 冬季号 |
古市憲寿 | 平成くん、さようなら | 文學界 | 9月号 |
町屋良平 | 1R1分34秒 | 新潮 | 11月号 |
直木賞
今村翔吾 | 童の神 | 角川春樹事務所 |
---|---|---|
垣根涼介 | 信長の原理 | KADOKAWA |
真藤順丈 | 宝島 | 講談社 |
深緑野分 | ベルリンは晴れているか | 筑摩書房 |
森見登美彦 | 熱帯 | 文藝春秋 |
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