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畠中恵の『明治・妖モダン』の感想と魅力

本の感想
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【書評】もしかしたら現在にも妖怪はそこらにいるのかもしれない『明治・妖モダン』畠中恵

江戸の闇に生きる妖怪

江戸の夜、現代とは違い電力がなかった当時、人々は提灯を持ち、月明かりを頼りに歩いていた。

行灯の明かりが豆電球くらいの明るさだというので、提灯もきっとそのくらいの明るさだったのだろう。

それはもう心細かったに違いない。
風が吹いて火が消えれば、辺りから一瞬にして明かりが奪われる。

今でこそ深夜――、ちょっとした小道に迷い込むと明かりが少なく、ざわざわっとした恐怖に襲われることがある。

江戸時代はその状態が常だった。
それは妖怪を信じたって仕方がない。
現代なら多くのことが科学で証明できるだろうが、当時は証明できないことのほうが多かったのだから――。

明治――、移りゆく社会と妖怪たち

本書はそんな江戸時代から明治に変わって間もない時代の物語――。

文明開化が進み、瓦斯灯が現れ、ぽつりぽつりと明かりが灯されるようになった。

それは現代から考えるとひどく心細かいものかもしれないけれど、当時の人々にすればとんでもない進歩に違いない。

だから彼らは、妖怪への畏怖を失った。

「巡査さん、今は夜の暗がりだって、アーク灯が退けちまうご時世なんですよ。今更雷様や、狐狸妖怪の話をされたってねえ」

と明治生まれの男はいう。

電気のなかった江戸の頃、人々が暗がりを恐れた故に、生まれた話、単なる物語なのだ。

――しかし本当にそうなのだろうか?

科学の進歩で確かに夜は明るくなったが、本当に妖怪はいなくなったのだろうか。

なんたって――、

「時も土地も、江戸から切り離されたわけじゃない。」

そして、

「たった二十年で、そういう者達が、きれいさっぱり消えると思うか?」

と銀座派出所の原田さんは言う。
――、彼は1つのお話を始める。

銀座派出所で起こる怪奇事件

本書は、不思議な話を描く連作長編。
主人公は現在派出所に勤める原田、滝の巡査コンビだ。

彼らは色々な事件に関わっていくのだが、どうもその事件には人間以外の力が関わっている気がする。

ふたりの巡査は、行きつけの牛鍋屋に集まる「百賢」「赤手」「お高」の協力も得つつ、事件を解決していく。

そして、本書を通して彼らと関わっていると、どうにも彼らに対して漠然とした不安を覚えるようになる。

怪我がすぐに治ったり、少しおかしな言動をしたり……。
実は彼らもまた、本式の妖怪ではないのだろうか――?

本書の魅力は雰囲気だ。
どこかにまだ妖怪がいるんじゃないかって思わせてくれる雰囲気がこの本にはある。

それはきっと妖怪たちを取り巻く人間関係が起因している。彼らは妖怪を見ても驚くこともなければ疑うこともしない。

本当に江戸時代に妖怪がいたことが常識だったと思わせてくれる。

そうだったからこそ、江戸から明治に変わったからと言って、そんな急に妖怪がいなくなるわけがない。

そしてそれは、明治、大正、昭和、平成、そして令和と数は減りさえしても妖怪はまだ健在かもしれないと思わせてくれるのだ。

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