こんにちは。
都会ッ子(――郊外生まれ郊外育ち)たる所以のせいか植物に詳しいヒトに憧れるのですが、皆さんはどうですか?
植物に詳しくなれば、なんだかとても世界が広がりそうですよね。
歩いているだけで楽しい気持ちになれそうですよね。
それが食べられるなんてなると、もうトクベツに。
そんな思いを抱いてるからこそ、「植物図鑑」というタイトルを見たらついつい買ってしまいました。
有川浩には警戒しないといけないというのに……!
植物図鑑を読んで
ベタ甘、激甘、胃もたれ注意
有川浩には警戒している。
と云うのも「ベタ甘、激甘」小説の名手だからである。
だが、どうしたことか私が今まで手に取った、「空飛ぶ広報室」「旅猫レポート」「三匹のおっさん」、3作にはその傾向が見られなかった。
――だから油断していた。
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」
開始早々これである。やられた……。
これはもう「ベタ甘、激甘」小説で間違いない。
この始まり方で「ベタ甘、激甘」じゃないわけがない。
小説にリアルを求めているわけじゃないけれど、さすがにこれはいかがなものか。
携帯小説でもあるまいし、――と思ったら本作は携帯小説サイトに連載されていたらしい。
さらに知らなかったのだが、有川浩は「電撃小説大賞」でのデビューだという。
なるほど、と思わず納得した。すっと腑に落ちる。
しかし私の落胆とは関係なしに、「ベタ甘、激甘」小説は進行していく。
「……手、出してよ。女だって好きな男にそんなおキレイにお行儀よくされてたら傷つくよ」
「引き金二回目」
なるほど、これはきつい。
正直云うと何度も読むのを辞めようかしらと考えた。
しかしそれでも本を置かなかったのは、やっぱり植物のおかげである。
「植物図鑑」としての「植物図鑑」
植物を目次にしたもので、梨木香歩の「家守奇譚」や吉屋信子の「花物語」を読んだことがある。
どちらも魅力的な物語で、非常に愉しむことができた。
だが唯一不満を覚えたのが、不便なのである。
なにが不便って、出てくる花が気になるので、いちいちグーグル検索をしないといけない。
それに比べて、「植物図鑑」はなんと巻頭に写真がついているのである!
植物の名前が出てくるたびに、巻頭の写真を見るのはとても楽しかった。
なんという優しさ、きめ細やかな配慮。
これはもしや「イツキ」のクレジットが入っているのでは? と期待したが、アマナで勝手にがっかりする。
さらにこの物語で魅力的なのは「雑草」の魅力である。
テーブルにはツクシの佃煮とばっつけ味噌、天つゆ、保温してあったさやかの混ぜごはんが次々並び、最後にフキの煮物と味噌汁がイツキの手で到着した。汁椀からフキノトウの香りがぷんと漂う。
イツキの手にかかると「雑草」がこんなにも魅力的な料理に変身するのである。
「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」
とイツキとさやかに云われるだろうか。
作中の「雑草料理」食べてみたいなあ。
これを読んで、明日から歩く世界が変わっていることだろう。
道端に咲く「名のある草」に目を向けてみようと思える作品である。
さらに巻頭の「雑草写真」に加えて、巻末には「イツキの”道草料理”レシピ」が収録されている。
なんという優しさ、きめ細やかな配慮。(2回目)
「激甘恋愛小説」だと胃もたれするかもしれない。
ただの「植物図鑑」だと退屈するかもしれない。
ふたつの魅力がいい感じに和えられて、丁度良い小説ができあがっている。
おすすめ関連本
「植物図鑑」のような「激甘恋愛」小説は個人的にあまり好まないので、
花に関連する小説を紹介させていただきます。
読書感想の中でも書かせていただきましたが、「家守奇譚」「花物語」の2作。
この2作は「植物図鑑」と同様に、目次で植物の名前が用いられています。
「家守奇譚」であれば、
サルスベリ、都わすれ、ヒツジクサ――etc
「花物語」であれば、
鈴蘭、月見草、白萩――etc
ただどちらも「植物図鑑」とは毛色が違うので注意してください。
植物を辿って「植物図鑑」に辿り着いた方には、おすすめです!
「家守奇譚」梨木香歩
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多…本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。
「BOOK」データベースより
「花物語」吉屋信子
少女の日の美しい友との想い出、生き別れた母との突然の邂逅、両親を亡くした不遇な姉弟を襲った悲劇…花のように可憐な少女たちを美しく繊細に綴った感傷的な物語の数数は、世代を超えて乙女たちに支持され、「女学生のバイブル」とまで呼ばれた。少女小説の元祖として、いまだ多くの読者を惹き付ける不朽の名作。
「BOOK」データベースより
いかがでしたか?
読書感想文は難しいですね。
もし感想に共感していただけるようでしたら、
他の感想文も読んでみてください。
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