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『かにみそ』へんてこなタイトルからは想像もつかないホラー作品の感想は?

本の感想
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読み終え、2秒くらい蟹を食べたくなくなりました

『かにみそ』というタイトルはずっと引っかかっていた。

どこで聞いたのか覚えていないが、『かにみそ』という名前の本があるという、さらにそれはホラー小説だという。

そのよくわからないなんとも言えないタイトルに特別惹かれたわけじゃない。

なのでずっと放置していたのだが、本屋でふとポップな表紙を見、その名前、表紙、そしてホラーというちぐはぐさに惹かれた思わず購入してしまった。

怖いのか、怖くないのか? 徐々に迫りくる不思議な気持ち

本書は、主人公の男が海岸で蟹を拾うところから始まる。
この蟹が不思議な蟹で主人公の手のひらに飛び乗ってきたという。

本作の主要人物(?)はこのふたり。
ふたりと一匹というべきか。

この蟹は当然というべきか、そこらへんにいるような蟹じゃない。なんたって手のひらに飛び乗ってきたというくらいである。

この蟹は、食べ物を食べ、とても大きくなった。
水槽と同じくらいに。
さらに小さくもなれるという。
さらにさらに、新聞だって読めるし、テレビだって見れる。
水槽から出ることもできれば、話すこともできる。

主人公はそんな蟹を気味悪がるわけでなく、むしろ愛くるしく思うようになった。

この蟹は大食いで、何でも食べた。
何でも食べるその食欲のせいで、主人公のお金が底をつきそうになる。

そこで主人公は派遣会社で就職することになるのだが、これが物語の分岐点になる。

この派遣会社の正社員と付き合うことになった主人公はひょんなことから彼女を殺してしまった。

主人公はその現場に蟹を連れていき、蟹は「遠慮なく」といい平らげてしまった。

涙あり、殺しあり、不思議な蟹との友情劇

この作品は「泣けるホラー」というコピーがつけられている。

その訳は、最後まで読んでほしいのだが、涙が出てくる要因として、この蟹が妙に可愛らしいというところにある。

人間を喰い肉団子にするような怪物なのだが、可愛く見えてくるのである。

たとえば、

「どうしたの? 浮かない顔しちゃってさ。ちゃんと飯食ってないんでしょ。駄目、駄目。食わなきゃ死ぬのは、人間も俺たちも同じでしょ。腹減ってるとさ、絶望感2割増しになるもんだよ。というわけで、ご飯にしようよ。お前ってば、いつもインスタントばっかりなんだもん。たまには、まっとうなやつ食べようよ」

こんな具合に、ちょっとかわいい口振りで、大人びたことを言うのが最高に可愛い。

表紙の影響もあるのかもしれないが、もう途中からは蟹が愛くるしく思えてくる。
人を喰い、肉団子にするのだが。

たぶん主人公もそう思っていたのだろう、蟹を第1に考え生きていくのだが……。

恐ろしさと、優しさと、愛くるしさが詰まった、ちょっぴり切ない変わったホラー小説。

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