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アイドルは前髪が動かない。アイドルたちがアイドルとは何かを考えつつ武道館を目指す、朝井リョウ『武道館』の感想は?

本の感想
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アイドルオタク朝井リョウ・語りを得意とする朝井リョウの真骨頂小説

『武道館』はNEXT YOU というアイドルたちがデビューしてから目標である武道館でのライブを目指す物語である。

その間にアイドルに降りかかる色々できごと。

例えば、

  • 恋愛が報道され、頭を刈り上げて謝罪したアイドル。
  • 握手会で刺されたアイドル。

これは実際に起きたあの事件を彷彿させる。(というかAKBの事件と言い切っても間違いない)

そんなできごと、世論、大人、友人、そしてメンバーたちにそれぞれが振り回されながらアイドル像を考える小説。

これが朝井リョウという作家にぴったりな作品なのである。

朝井リョウはご存知の通り、『桐島部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
その後『何者』で直木賞を受賞し、押しも押されもせぬ人気作家の仲間入りをした。

この2作はそれぞれ、朝井リョウの観察眼によって生み出された作品と言っても過言ではない。

例えば『桐島部活やめるってよ』はスクールカーストを描き、その上位、中位、下位、それぞれの視点でそれぞれのカーストを描き出している。

スクールカースト上位の生徒が、一生懸命物事に取り組む下位の生徒に対し、きらきらしているように見えたと述べたところなんて衝撃を受けた。

朝井リョウが学生時代、カーストのどこに属していたかは当然知らないが、すべてのカーストを経験できることなんてないので、観察から生み出された賜物だろう。

さらに『何者』では就活する学生について焦点を当てている。

就活に励むもの、一歩引いて俯瞰するもの、就職はダサいと決めつけ我が道を行く振りをするもの。

三者三様の就活がそこには書かれている。

友人が内定した企業の口コミを調べているシーンは思わずギョッとした。多分、多くの人が経験したことだろう。

こんな鋭い観察を持った朝井リョウの作品は、そこから導き出される考察を登場人物たちに語らせる。

その語りがいちいち考えさせられるのである。

例えば本作であれば、

  • アイドルとは何か?
  • なぜ恋愛をしてはいけないのか?
  • 今まで普通にしていたことが普通にできなくなるのか?
  • 歌って踊るのが好きなだけなのに……。

そんなアイドルならではの苦労が、考えが書かれている。

もちろん、朝井リョウはアイドルではないので、
これは取材と観察から生み出されたものだろう。

今まで朝井リョウは経験したものを書いてきた。
例えば、「学生」、「就活」。

しかし今回は経験したことがない事柄についてである。
果たして、そこにリアルがあるのかと聞かれるかもしれない。

そう聞かれれば私はこう答えると決めている。

「朝井リョウはアイドルの大ファンらしいよ」

アイドルについて考えさせられ、
さらにいつの間にか作中のアイドルを応援している。
そんな爽やかで、考えさせられる1冊。

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