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【書評】世界的ベストセラー作家 中村文則の50作を詰めた短編集『惑いの森』中村文則

本の感想 本の感想

こんにちは。

中村つながりで、中村航のあとに中村文則を読みました。
まったく雰囲気の異なる2人の作家。
なんだか嫌になるくらい陽と陰。

今回読んだ「惑いの森」は不条理の連続で、1度入った瞬間に道を失い、当然のように出られない、そんな作品でした。

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惑いの森を読んで

当然のように不条理

「最近、多いよな。植物になろうとするやつ。この辺の植物はみんな元々人間だったんだよ。でもよかった、俺が見つけて」
【樹木青年】

 

男が洗面所の鏡を見ると、頭にツノが生えている。
いつかこんなことになると思っていたが、まさかこのタイミングで生えるとは。
【ある日、ツノが生える】

そんな不条理のデキゴトが単発で、淡々と起こる。
怪奇小説のようなデキゴトも頻出するのだか、登場人物が皆、その不条理を、まるで当然のように受け入れるので、怯える余地がない。

例えば「ある日、ツノが生える」では、デパートのトイレで突然ツノが生えるのだが、男は「ツノが似合う髪型にセットしようとしたが、無理だった」と気にする様子もいない。

もしかして作中世界ではそれが当然なのかしらと思っていると、男はしっかりとジャケットで頭を隠して帽子を探しに行くのである。

つまり男は当然のようにツノが生えていることを認めたのだが、ツノが生えていることは当然ではないデキゴトであると理解しているのである。

この「惑いの森」ではそんな不条理が当然のように行われている。

教団という暗示

さて、この物語は何を暗示しているのか。
単発に感じるようで、薄く細い繫がりが見える本作。

その象徴ともいえるのが「教団」である。
この「教団」は50話を通して、登場したりしなかったりするが、その中でも少しづつ「教団」の物語が進んでいく。

作中で最初に教団が出てくる話は、表題作の「惑いの森」(ここにも作者の意図を感じる)。

その後、教祖が失踪したりと何かとあるのだが、細切れすぎて、全容の物語が掴めない。

もしかすると「教団」の話だけを抽出するとなにか見えてくるのかもしれない。

あるいは教団の話を裏のストーリーとして、表のストーリーに紛れ込まることで、あえて暗示を見えにくくしているのかもしれない。

――、もしくはそこには何もないのかもしれない。
ただ連作を書いていくうえでの、1つのアイデアでしかないかもしれない。

「教団」の話を抽出すれば結論が出るのかもしれないが、論文じゃないのでそこまでしない。

――、再読するときには付箋をつけて読み進めよう。

もし未読な方がここにたどり着いたなら、付箋をつけて読み進めてほしい。
そうして何かわかったら教えてください。

毎夜、午前一時にバーに現われる男。投函されなかった手紙をたったひとり受け留め続ける郵便局員。植物になって生き直したいと願う青年―狂おしいほどに愛を求めながら、満たされず生きてきた彼らの人生に、ふいに奇跡が訪れる。抗えないはずの運命に光が射すその一瞬を捉えた、著者史上もっともやさしい作品集。魔性の50 Stories。

おすすめ関連本

中村文則作品で、「教団」という単語から当然のように「教団X」を想像しました。
どうやらこの作品を書いている時に、「教団X」の連載が行われていたらしい。
だからこそ、「惑いの森」に「教団」が頻出したのかもしれません。
――、もしかすると繋がりがもあるかもしれません。

突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者の最長にして最高傑作。


 

いかがでしたでしょうか。
もし「教団」の暗示が分かったら、教えて下さい。

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