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【書評】こんな仕事があれば喜んで転職したい『この世にたやすい仕事はない』津村記久子

本の感想 本の感想

突然ですが、
私は仕事が嫌いです。

だから「この世にたやすい仕事はない」というタイトルを見た時、
そんなことはないって言って!」と思って手に取ってしまいました。

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もしかして簡単な仕事ってあるんじゃないの?

疑問?

まずは「とても簡単なあらすじ」を!
燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性が、「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」と言うふざけた条件を、職業安定所で提示する。まさかあるはずがないと思うのだが、「ある」と相談員が言う。そうして主人公は1年で5つの異なる仕事を巡って行くのである。

5つの不思議なお仕事

「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」というふざけた主人公が経験する仕事は5つ。

  1. みはりのしごと
  2. バスのアナウンスのしごと
  3. おかきの袋のしごと
  4. 路地を訪ねるしごと
  5. 大きな森の小屋での簡単なしごと

 

(1)ある人の生活を監視する仕事
特に説明も不要で、ただただ人を監視しているだけの仕事。
とても楽そうですけれど、人の監視をするというコトは終わりがなく、常に仕事がたまっているというコトになる。なので、残業時間も長いらしい。
さらに主人公は作家を監視しているのだが、作家ってことでパソコンの前から動かない。
良く考えてみると辛いかもしれませんね。
ちなみに主人公は監視対象者の使っているものが、欲しくなるが、勤務時間が長く通販の受け取りができないので、欲しいものばかりがたまって行くという悩みを抱えていました。
しかしなぜ彼女は作家を監視しているのでしょうか?

 

(2)バスに流れる広告のアナウンスを考える仕事
コウノトリバスという循環バスは経営難で事業を畳もうとしていたが、住民からの支持でもう少し踏ん張ってみることにした。
とは言え、お金がなくてはバスを走らせることができないので、広告をもらってその収入で当面は切り抜けることにした。そこで、バスのアナウンスを考える事業が発足して、主人公は先輩の江里口さんと働き始める。
前職よりクリエイティヴな仕事についた主人公。
バスのアナウンス作りはなかなか面白いのだが、職場環境が気になる。
というのも、彼女の上司で風谷課長が江里口さんをそれとなく見張ってくれと言いだしたのだ。
どっちにつきたくない主人公はなあなあで切り抜けるのだが、確かに江里口さんの不思議なことが目に付くようになった。
なんと彼女がアナウンスを作るとその店が出現するのである!

 

(3)ふじこさんのおだやかアドバイスを作る仕事
前職で作ったアナウンスが評価されて転職した主人公。
次の仕事はおかき袋の裏に書かれた一言を考える仕事だった。
どうでもいいような仕事に思えますが、この会社ではそれなりに重要らしく、おかき袋の裏でどのような企画をやるかを選挙で決めるという。
つまり主人公が作った何案かが選挙で決められる。それを知って少し気が重くなる主人公。
もともと熱心で責任感が強いため、日に日にやつれながらも「おだやかアドバイス」という企画を打ち出した。めでたく通ったその企画で彼女はアドバイスを書きまくる。
するとなんとたまたま書いた遭難した時のアドバイスで遭難者が助かったという。
しかもなんとその遭難者の妻がふじこさんというらしく、メディアが黙っているはずがない。
さらに遭難者の妻であるふじこさんが出たがりのため、どんどんことが大きくなってくる。
その間にもアドバイスを書き続けているのだが、そんなにアドバイスなんてあるはずもなく、行き詰って行く。
そんな時、社長がふじこさんにも手伝ってもらおうじゃないかと言いだした。
そもそもそんな簡単に外部の人に書かせていいものか? 主人公はやきもきしていく。

 

(4)ポスターを張り替える仕事
外回りでもしますよ、と「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」と言っていることがずいぶん変わった主人公が次に経験する仕事はただ古くなった行政ポスターを張り替える仕事であった。
しかしなぜポスターを張りかえるのか? 主人公が張り替えているうちに明らかになる。
というのもポスターを張っているうちには種類があって、
1つは主人公が貼って回る「行政ポスター」のみ。
1つは「行政ポスター」と「さみしくないという宗教ポスター」。
その2つか何も張ってないか。
そしてどうやら、宗教のポスターは行政ポスターーが貼ってあるとこにしかないらしい。
そうすることで宗教のポスターをまるで、町がつくっているポスターのように見せているらしい。
さらに調べてみると、その宗教はなかなか悪徳なところもあるらしい。
主人公は悪徳宗教を調べるために、ついに業務外の潜入捜査のようなこともやらかし始める。
全てのポスターを行政ポスターに張り替えたいというオセロ的志を持ち働く主人公ははたしてこの戦いに勝利できるのか?

 

(5)自然公園の奥地でチラシと散歩をする仕事
前職で疲れたのか、今度はまたのんびりした職場に戻ってきた(前職では自ら忙しくしていましたが)。今度の仕事は前職者が「静かすぎて辞めたい」と言って辞めたくらいの仕事だ。
内容はものすごい広い公園の奥地で、迷子者がでたら確保するというもの。ただそれだけだと暇すぎるので、チラシに切れ目を入れていてくださいというもの。
基本的に一人なので、本を読んでいてもばれなさそうでいいなあ。
主人公は木の実に目を付けたらしく、好みの木の実を探し回る毎日。
そんな時、前職者と出会う。
「幽霊が出るので気を付けてください」彼女はそう言って立ち去った。
そう考えてみると、確かに持ってきたはずのめんつゆがなくなっていたりする。
ふいに見えた人影。上司に相談するとそれは鹿と言いだした。なんでもこの公園では野生化した鹿がいるらしい。
果たしてそれは本当に幽霊のしわざなのか

1年間でこんなににも不思議な仕事に巡りつくのはすごい。

公園の仕事紹介してください

この世にたやすい仕事はあるじゃないですか!

アナウンスを作る仕事、おかきの袋のアドバイスを作る仕事はさておき、監視、ポスター、迷子の仕事は絶対に楽!
やりたいので、だれか紹介してください。
特に、自然公園の仕事を紹介してください。

とはいえ、この主人公もそうですけれど、仕事ってなると少し変わって来るんですよね、考え方が。
ある程度は成果を出さなくちゃいけないとか、他の人はあんなにも頑張っているのにとか。

みんなが頑張っていないのであれば良いんですけれど、みんな頑張っちゃうから、ならこっちも少しはやらないといけないってなるんですよねー。みんな頑張らないでー。

もしかすると作品内に出てくる、
こんな浮世離れした仕事ならそんなこと考えないで済むのかもしれません。

一風変わったお仕事小説。
くすっと笑って突っ込めるので、ぜひ読んでみてください。

しかしまあこういう面白い仕事の話を読むと、
今やっている仕事の変哲のなさに嫌気がさしますよね。

本当にこんな仕事あるの?

もちろんこの作品はフィクションで、説明文にもお仕事ファンタジーと書かれています。
しかし本当にこんな仕事はないのでしょうか。
あればエントリーシートを送りたいということで、簡単に検索してみました。
※すべて探すのは面倒なので、1番やばそうな監視する仕事を探してみました。

ありません! ――たぶん(即答のようですが、ずいぶん検索しました。)。

良く考えたら、人の家にこっそり監視カメラ付けるなんて普通に違法ですし、もしあるとしてもそんな簡単に見つかるようにはなっていないでしょう……。

念のため他の仕事も軽く調べてみました。

バスのアナウンスを作る仕事

ありました!

地下鉄やバスの車内アナウンスの制作スタッフ
『まもなく、栄、栄。お出口は右側です』『発車します。ご注意ください』などと、地下鉄やバスの車内で聞こえるアナウンス。この制作を手掛ける仕事です。入社後は、ベテランの先輩と一緒に進め、少しずつ業務を覚えていきましょう。

調べてみると意外と難しそうです。

このような一連の工程は複雑なパズルを解いているようなものです。頭脳をフル回転させますので、時には疲れてグッタリすることもしばしば…。しかしデータが完成した時は自信と達成感に酔いしれるでしょう。

話が違いますね。次!

ふじこさんのおだやかアドバイスを作る仕事

これはもう、ぽたぽた焼の「おばあちゃんのちえ袋」ですよね。
ってことは亀田製菓に就職すればいいのでしょうか。
あるいは下請けに任せているのでしょうか。

これは分かりません。
誰か勇気ある人は確認してみてください。

ポスターを張り替える仕事

これは普通にありました。
ただその裏に「悪徳宗教」との戦いなどはないと思います。当然ですが――。

自然公園での仕事

これもあるんですよね。
というのも私も以前、転職しようと受けたことがあります。
ただ意外と倍率が高い。
新卒の時も受けたのですが、説明会には高学歴だらけでした。
大きな管理を必要とする公園とかは国立公園とかになるので、安定しているんですよね、たぶん。

受かりたかった。
いまでもまだその気持ちは捨てていないので、コネがあったらください。

やっぱりこの小説ほど、奇妙奇天烈な仕事はありませんでした。
とはいえ、この作品に登場する職業安定所の職員である正門さんの言う、
「世の中にはまだ私の知らない仕事があるようです」
この言葉のように、ヘンテコな仕事が隠されているのかもしれません。

5つの不思議な仕事を体験した主人公が羨ましい。
本音はこの世に存在している全ての仕事をしたくありませんが……。

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