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眠れなくなるほど好きな人ができたときに『僕の好きな人が、よく寝れますように』

本の感想
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【書評】最高純度の不倫小説?『僕の好きな人が、よく寝れますように』(中村航)

「中村航を読む前はにまにまする」ということを前回ここに書いた。

中村航の『さよなら、手をつなごう』は期待を裏切らない作品でした。(感想)
中村航が書いた『さよなら、手をつなごう』。あの頃、僕らはいつだって、目の前の何かに夢中になって、彼方の誰かに恋をしていた。宇宙飛行士を目指す兄の背中を、一途に追いかけていた幼い日々。たったひとりの親友以外には友達もいない学校生活で、不意に胸に焼きついた女の子の横顔ー。まっすぐでイノセントな少年少女たちの一瞬を切り取った、心あたたまる青春小説集。巻末に可愛い絵本も収録の、中村航・初の文庫オリジナル作品。

もちろん今回もにまにましながら本書を開いたのだが、本当ににまにましていいものかという不完全燃焼をする羽目になった。

当然だか、作品は何より面白く、優しくキュートである。

なぜにまにま顔をしていた私が、中途半端な顔をしたまま読了したのかは、あくまでも人間的な理由である。

ラブストーリーは突然に

大学院生の主人公が所属する研究室に、北海道からのゲスト研究員がやってきた。

北海道からきた”めぐ”の懇談会で僕らはよく笑いよく話すのだが、そこで、めぐがすでに結婚している事実を聞く。

――しかし急速に深まっていく二人の仲。

ある日、夜ご飯を食べ酔っ払った僕は、隣同士座る電車の中で、「好き」と呟いてしまった。
鳴り響く電車の進行音のなか、めぐの「同じ」という呟きが確かに聞こえた。

お互いの気持ちを理解したふたりは、逆にそのことで会えなくなる。

もどかしい気持ちを抱えた僕は、アルバイト先で知り合った木戸さんに相談に行く。

「お前ら二人は明日なき道を往けよ。きっと抗えねえことだったんだよ。何も残らなくたっていいじゃねえかよ。もともと恋なんてそんなもんだろうがよ」

「握手だよ。握手ってのはいいかもしれねえぞ。お前、今すぐその女のところに行って、握手してこい」

「いいか、万感の思いを込めるんだよ。お前の全部を込めてシェイクハンドするんだよ」

木戸さんに感化され走り出した僕。
――果たしてふたりはどうなるのか。

その明るい表情に、僕はしばらく見とれる。瞳孔全開の彼女が、とても可愛いかった。暗闇に映える彼女の笑顔が、世界で一番貴重なものに思える。好きだ。

感想と思い

冒頭に書いた私がにまにまできない理由は、これが不倫に属するからである。

恋愛には間違いない。
主人公たちは必死で、本気で、止まらない。
しかしこれを純度100%の恋愛と言っていいものなのだろうか。

そもそも恋愛とは何なのだろうか。
勝手に言っておいて純度100%の恋愛なんて存在するのだろうか。
ただただキュートな物語を考えていたので、妙に考えさせられる結果になったが――、結論はでない。

こんな難しい問題は、どこかの哲学者に任せることにする。

◇     ◇     ◇

本書の最大の魅力はやっぱり会話劇だ。

随所に面白い会話があり、やっぱりにまにまさせてもらいました。

そしてそして、本書には木戸さんが登場する。

木戸さんとは『絶対、最強の恋の歌』に登場した先輩で、今回も唐突に主人公の先輩になる。

前述セリフもそうなのだが、木戸さんの言葉には力がある。

例えば、

「この世にはマグレと気まぐれしかねえんだよ」

「俺はしばらく地下に潜る。だけどな、いつか必ず浮上してやる。そんときになったら俺はまた吠える。だからいいか、しばらく俺んちには来るんじゃねえぞ」

かっこいいぜ、木戸さん。
言ってることは破茶滅茶なんだけれど、筋が通っているせいか、どこか貴方の背中は大きく見える。

『砂漠』の西嶋とか、『火花』の神谷もかっこいいけれど、木戸さんが1番かもしれない。

ぜひこの本を読んで、木戸さんと出会い、うははははと笑い、僕とめぐの恋愛を見て、にまにまと笑い、そして恋愛について少し考えてみてほしい。

そして解を、誰か、私に教えて下さい。

※ちなみに意見が分かれる結末ですが、私はこの終わり方が狂わしいほど愛おしい。

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