《随時更新中》夏に読みたい本をまとめました

中村航の『さよなら、手をつなごう』は期待を裏切らない作品でした。(感想)

本の感想
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【書評】にまにま笑いが止まらない、読んだら幸せになる『さよなら、手をつなごう』中村航

中村航を読むまえ、思わず”にまにま”することがある。

なぜかって――、中村航の小説は常にキュートだ。

表紙も中身もすべてキュートで、ついつい顔が綻んでしまう。

電車で読むときは、顔面の筋肉をフル動員で、眉間に力を入れる。
じゃないと、思わず顔が弛緩してだらしなくなってしまうのだ。

餌を前にした食いしん坊犬のように。

『さよなら、手をつなごう』の作品概要

短編集である『さよなら、手をつなごう』はやっぱりキュートでなのだが、今まで読んできた中村航とは少し違う気がした。

といのもどこかファンタジー要素が含まれているのである。

中村航といえば、ちょっとした日常も特別なものに変える魔法を持っているのだが、今回はそもそも特別な日常が描かれた作品があった。

それは、

  • さよならマイルストーン
  • さよなら、ミネオ

の2編。

そして奇遇か必然か、この2篇はタイトルと同様に、「さよなら」という文字が含まれている。

本書はすべて「さよなら」をモチーフにしているという。

さよなら青春、さよなら初恋、さよなら君のイノセンス、さよならブルー、さよならわが青春のボクシング、昨日のシャツにさようなら
――あとがき

しかし具体的に、別れが視覚化できる物語はこの2つだけ。

マイルストーンは魔法使いカエルとのお別れを、ミネオはもうひとりの自分とお別れをする。

この2つを除けば、いつもの中村航作品である。

上記のような説明をし、誤解されるのも嫌なので、言っておくと、通常の作品、特別の作品、当然どちらも面白かった。

とはいえ、中村航には前者の作品を期待しているので、少し残念に感じることもあった。

期待を裏切らない作品

『さよなら、手をつなごう』の作品概要から中身に話を戻したい。

中村航の話がキュートなのはその会話劇にある、と勝手に思っている。

個人的に会話文を非常に有効に使うのは伊坂幸太郎で、読んでいると思わずくすっと笑い、また登場人物の知識量の多さに、賢くなった気になれる。

▼ 最近読んだ伊坂幸太郎作品

初心者にこそオススメの伊坂幸太郎が書いた『死神の浮力』
伊坂幸太郎が書いた『死神の浮力』。娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うがー。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。

中村航の作品は、それとはふた味くらい違い、うははははと笑う登場人物と一緒に、豪快に笑いたくなるような気持ちになる。

そして、過去にはこんなくだらない会話で笑いあったと懐かしくなる。

(テルテル坊主と嶋田が似ていると気がついたシーン)
「うりふたつ、うりふたつだよ! 嶋田、 」
「自分こんな丸い顔してないですよー。全然似てないっすよー」
「似てるよ! でも嶋田、ずいぶん小さくなっちゃったんだね」
私とさつきは、つるされたテルテル坊主坊主に向かって、話しかけた。
「そっち自分じゃないっすよー、勘弁してくださいよー」

思わずこのシーンを読んで、声を上げて笑いそうになった。

あった、確かに学生時代――、弄る人、弄られる人がい、始終グループにはこんな会話が絶えなかった。

忘れていた軽快でポップで、それでいてとてもキュートな会話のリズムを中村航はいつもわたしに与え、思い出させてくれる。

そのたびに、思わずにまにまと笑いが弾けそうになり、そうしてじんわり、涙が溢れそうになる。

本書はそんなにまにまと期待し、本を開いたわたしの期待を裏切らない作品だった。

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