【書評】腐女子がコミケで会社の闇を暴く!?『星間商事株式会社社史編纂室』三浦しおん

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こんにちは。
中村文則の暗い小説を読んだあとは、明るい突拍子もない小説でお口直し(悪い意味じゃない)をしようと思い、三浦しおん星間商事株式会社社史編纂室を手に取りました。

本作は自称腐女子の三浦しおん節が炸裂した小説でした。

星間商事株式会社社史編纂室を読んで

理想の窓際部署

私は就活をしていた頃、「電通の窓際部署」に勤めたいと考えていた。

きっと当時は有名企業というと「電通」しか知らなかったのだろう。

なので知っている有名企業である「電通」で高い給料をもらいながら、ぼーっとしていたいという気持ちが、「電通の窓際部署」に勤めたいという思いになった。

「でも実際に窓際なんていったら暇で仕方ないよ」
「いや、大丈夫、暇は得意だからさ」

―― そもそも電通なんて就職できるはずもないのだが、そんな話で盛り上がっていた。

そんな私の理想の部署が星間商事株式会社にはあった。
その部署の名は社史編纂室という。

なんだか名前を聞いただけで、埃っぽい資料室を想像してしまう、そんな部署である。

社史編纂室は5人で構成されている。

  • 幽霊部長
    →幽霊部長と呼ばれている室長で、誰も見たことがない。
  • 本間課長
    →定年間近になっても課長のまま。60周年記念を目指して社史作成を始めるが、記念式典に間に合わせようとせずに怠惰な毎日を過ごしている。
  • 矢田
    →遊び人で、専務の女に手を出して、社史編纂室に飛ばされたらしい。仕事中イビキをかいて寝ていることもしばしば。
  • 幸代
    →腐女子でオタク趣味をもつ主人公。同人誌を作っていることが職場でばれる。
  • みっこちゃん
    →ダイナマイトボディ。職場ではお菓子とネイルに励んでいる。

この職場の緩さはこの文章を読めば分かる。

しかし課長が定時に出社せず、作業の中核を担なうべき矢田だがトイレに籠ったままというこの状況はいかがなものか。

社史編纂室にはしばし、プリンターが紙を吐きだす音とみっこちゃんがお菓子を食べる音と矢田のいびきが響いた。

腐女子が会社の闇を暴く?

三浦しおんの「お仕事小説」といえば、映画化もしている「舟を編む」だろう。
辞書と社史。似ていないコトもないが、今回の小説が「舟を編む」と違うのは、社員のやる気である。

タイトルから「お仕事小説」だろうと思って手に取ったが、数ページ読んで、果たしてこれは「お仕事小説」なのだろうか考え直す必要があると思った。

なんせそれほどまでに仕事をしないのである。
矢田は寝ているし、みっこちゃんはネイルをしている。そうして主人公の幸代はそれに対して文句を云いながらも「BL小説」をばれないように印刷しているのである。

――が、物語は急に方向を転換することになる。
過去のことを調べていると、ふいに情報が少なくなる、題して「高度成長期の穴」があることが分かった。
そして幸代に触発されて書いたという、元小説家志望である本間課長の小説が不思議と彼らが調べている「高度成長期の穴」とリンクしているのである。
――、「これ以上、嗅ぎまわるのはやめておけ」という社史編纂室に届いた脅迫状。
物語はサリメニという国を巻き込んで大きく進展していく。

サリメニって国は存在しません。ついつい調べてしまいました……。

そこに来て、社史編纂に予算が取れないという通告。
「これは会社ぐるみで隠したい事実があるに違いない!」
悩んだ社史編纂室はなぜかどうして、裏社史を作ってコミケで販売しようという結論にいたった。

不意にでてきた「コミケ」という発想に驚きながらも、面白くなってきたと俄然ページを捲る手が逸る。
そうして最後には「お仕事小説」と同様の達成感を味わっていた。

一風変わった「お仕事小説」。
むしろこれは働き方改革で趣味と仕事を両立させようとする現代の「お仕事小説」なのかもしれない――?

川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。

おすすめ関連本

感想でも紹介した「舟を編む」。
これは仕事って面白いんじゃないかという錯覚するほど、面白い小説でしたので、未読ならばぜひ読んでみてください。
この本を読んで私は辞書を買おうかと思いました。

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

 


 

いかがでしたか?
一味違うお仕事小説。
読みだしたら止まらなくなりますので、注意してください!

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