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東日本大震災について書いたいとうせいこうの代表作『想像ラジオ』の感想は?

本の感想
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東日本大震災があった2011年(平成23年)3月11日(金曜日)14時46分18秒

まさか、そこまでとは思わなかった。

2011年(平成23年)3月11日(金曜日)14時46分18秒。
私は絶賛高校生を満喫中だった。

その日はちょうど用事も何もなく、帰宅途中――、ちょうど帰りがぶつかった小学生たちに混じり、橋の上を歩いているときに、ぐるんと見が回ったような感じがした。

そして波打つように橋が揺れてるように思われた。
近くのスーバーから人がわらわら飛び出し、おじいさんが「早く橋を渡りなさい」と小学生に向かって叫んだ。

小学生たちはわっと声を出し橋を渡りきり、私は戻ったほうが良いか、渡りきったほうがいいかのんきに考えたのちに、渡りきった。

みんな唖然としていたように思われる。

しかし私は少しほっとしてた。
当時SNS「mixi」が高校生の中では流行っていて、そこで「首都直下型地震、南海トラフ地震のどちらか知らないけれど、これくらいの揺れですんで良かった」
なんてことを呟いたことを覚えてる。

家に帰って部屋で本を読んでいたが、余震とは思えない大きさの揺れが来ていちいちどきどきした。

両親が帰ってきて私の呑気さに唖然とし、「すごい地震だったね」と言った。
下に降り、リビングで、テレビを見、東北が震源地だと知った。

未曾有の揺れ方だとテレビが放送した。
そして津波がくると言った。

それからは大混乱だった。
この世のものとは思えない映像が繰り返された。
灰色の水が押し寄せ、家屋を流した。
原発が爆発し、放射能が漏れた。
そして思い出したように大きな揺れが起こった。

2019年7月9日時点で、死者・行方不明者は1万8429人。

想像力の力を信じて

東日本大震災で多くの方が亡くなった。
それは途方も無い数で、私たちの想像力を麻痺させた。

そのせいか当時心にぽこりと穴が空いた気がした。
想像力の欠如は生活から色を奪った。

そんなときだからこそ、想像力に頼らなければいけなかったかもしれない。あの状況下でそんなこと無理だろうと思うだろうし、理想論になるけれど、想像することで、もう少しうまく生活できたのかもしれない。

「想像ラジオ」は死者が語るラジオで、リスナーも多くは死者である。そして彼らは「想像」を介し、繋がり続ける。それは耳を澄ます生者にも聞こえることがあるかもしれない。

作中に書かれる登場人物の作家は、死者と想像することで会話をした。それは決してオカルト的な話ではなく、その人ことを本当に良く知っていれば、想像でその人が何を言うかだいたいわかるだろう。

想像力があればあの震災を乗り切れたなんて言うつもりもなければ、乗り切れるはずないだろうと私も思う。

けれども想像力があれば、少し、ほんの僅かでも死者と繋がれるんじゃないか、そう思うことで少し心に色が戻ってくる。そんな僅かな希望が心の穴を少し塞いでくれるかもしれない。

本書はそう思わせてくれた1冊だった。

海沿いの小さな町で、なぜか高い杉の木のてっぺんに引っかかっているというDJ(ディスク・ジョッキー)アーク。彼がパーソナリティをつとめる『想像ラジオ』は、「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中だけ」で聞こえるラジオ番組。リスナーから次々と届くメールを軽快に読み上げるアークだが、どうして自分がひとりで木の上にいるのか、なぜリスナーから次々とメールが届くのか状況はつかめないまま。そして彼には、どうしても聞きたい、ひとつの〈声〉があった……。ヒロシマ、ナガサキ、トウキョウ、コウベ、トウホク── 生者と死者の新たな関係を描いた、いとうせいこう16年ぶりの新作小説。

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