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【書評】平成最後の大みそかに元号推理『江神二郎の洞察』有栖川有栖

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「江神二郎の洞察」を選んだ理由

この物語に収録されている「除夜の鐘」。
これは昭和最後の大晦日を書いた物語だ。
前に読んだのは単行本の時で、記録を見たら2013年。当時はまさか平成が終わるなんて考えてもみなかった。しかし昭和の大晦日に、次の元号を予測する推理ゲームはひどく私を魅了した。
2018年12月現在。そろそろ平成最後の大晦日を迎えようとしている。私はふとその事実に気がついた。そうしてこの本を読まねばと強迫観念のように、手に取った。

著者:「有栖川有栖」情報

1959年、大阪生まれ。1989年、『月光ゲーム』で鮮烈なデビューを飾る。以後、精力的に作品を発表し、2003年『マレー鉄道の謎』で第56回日本 推理作家協会賞を受賞。2008年には『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞を受賞した。精緻なロジックを積み重ね、構築した世界そのものをひっくり返 してみせる鮮やかな手腕と、物語性豊かなその作品は、世代を問わず常に読み手を魅了しつづけている。

「江神二郎の洞察」抜粋

英都大学に入学したばかりの一九八八年四月、すれ違いざまにぶつかって落ちた一冊―中井英夫『虚無への供物』。この本と、江神部長との出会いが僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった。アリス最初の事件「瑠璃荘事件」など、昭和から平成へという時代の転換期である一年の出来事を描いた九編を収録。ファン必携の“江神二郎シリーズ”短編集。

推理小説ファンの方、あるいはそれ以外

私は推理小説の大ファンではない。
読む本すべて推理小説というほどのファンでもない。もしかすると推理小説を手に取る比率は、他の小説のジャンルと比較しても少ないくらいである。

正直、密室殺人になんて惹かれないし、推理小説でよくある犯人当てのクライマックスに鳥肌がたつこともない。
だがしかしどうしたことか、私は定期的に推理小説を手に取っている。

私の中で推理小説の醍醐味は、起承転結の「起承転」までである。
それじゃ推理小説を読む必要ないじゃないかと言われるかもしれないが、寝る間も惜しんで読みたくなる魅力はやっぱり推理小説に勝るものはない。
だからこそ、「結」が来るのが惜しいのかもしれない。物語が終わってしまうことが――。

と、私の読書感を話しても意味ないので、作品の紹介をしたい。

この小説は「月光ゲーム」「孤島パズル」「双頭の悪魔」「女王国の城」、英都大学推理小説研究会シリーズの第5作目にして初の短編集である。
これまでの本格長編推理小説とは少し変わって、読んでいて柔らかい印象を受ける。
作中でリアルタイムの死者もないので、どちらかというと「日常の謎」に近いか。
殺人事件が嫌いな読者もこの作品であれば、読みやすい。
またシリーズ長編作品よりも作中の人物が身近に感じられるのが特色だ。

そして、なんと言ってもこの小説の魅力は、メンバーの中で「知的ゲーム」と呼ばれる推理ゲームである。
そしてこの小説で最もおすすめしたい「知的ゲーム」が、単行本で既読の私が、文庫本を買ってまで読みたいと思った「除夜の鐘」にある。

この物語の舞台は昭和の最後、昭和天皇の容態に国民が神経を尖らせていた年の京都である。
英都大学推理小説研究会のメンバーである望月と織田は実家に帰省してしまい、主人公の有栖は江神部長とふたりで年を超すことになった。この物語は望月が書いた習作推理小説を骨格に進むのだが、それ以外にも元号推理、ミステリー論が含まれている。

そう、この年にぴったりの元号推理である。
みんなが次の元号を気にしている今、この本を読んで、理論武装したうえで、誰かに話してみてほしい。

「ずばり的中させるのは不可能や。ただし、イニシャルだけでやったり絞り込める。」
「(前略)かくして、本命がK、対抗がH、穴がNという理論が導かれるわけだ。」

かくしての理由はぜひこの本を読んでほしい。
この理論でいくと、平成の次はKかNになるのだろうか。

さらにこの本にはたくさんのミステリー作品が紹介される。私も読めていないのが多いので、ぜひ読んでみたい。

「瑠璃荘事件」
望月の下宿に住む男の授業ノートが盗まれた。4人で議論を交わして解決を導く。
「ハードロック・ラバーズ・オンリー」
有栖がロックカフェで出会った女性、彼女の忘れ物であるハンカチを拾った有栖はカフェの外で声を掛けるも彼女はそれを無視して行ってしまった。なぜ?
「四分間では短すぎる」
江神部長の部屋で飲み会を開く。なにか面白い話をしろと言われた有栖は、さきほど見た光景を話した。
「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに。いや、Aから先です――という言葉の裏に、どんな意味が隠されてると思いますか?」
などなど。

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