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【書評】SNSで特別な毎日を求めて、肩肘張って生きている人へ『また会う日まで』柴崎友香

本の感想 本の感想

こんにちは。
本日は柴崎友香さんの「また会う日まで」を紹介させていただきます。

柴崎友香さんの作品は「きょうのできごと」「きょうのできごと、10年後」に次いで3冊目らしいです。
「らしい」というのは大学1回生の頃から記録を取っていてそれを参考にしているのですが、それ以前に読んだことがある気がするので「らしい」にしました。

また会う日までを読んで

読み終えて、目をつむる。
心には何か残っているようで、――、しかしそれは漠然としていて“何”かわからない。
「事実は小説より奇なり」と云うが、生きる上で、本当に物語らしい物語なんて滅多に遭遇しない。

「特別な感情」探しの1週間。

この小説は東京にきた女性の月曜日から土曜日の1週間を描いた物語である。

主人公の有麻は会社の休みを使って1週間、東京へきた。
今回はそのついでに鳴海くんに会ってみようと思い立った。
――と云うのも、鳴海くんは高校の友だちで、有麻は彼に対して恋とは違う特別な感情を抱いていた。

「なんて言うたらええんかな。うーん、動物っぽい勘? かっこいいとか付き合いたいとか言う気持ちでは全然なくて、なんとなく、鳴海くんと一緒におるときは、生き物っぽい感触がするねん」

そういう有麻に対して、鳴海くんも修学旅行の夜の心理テストで、有麻がセックスフレンドという結果が出た時――。

「あー、わかる。そんな気ぃするわ」
そのときわたしは、ああ、やっぱり思っていることはバレるねんな、と思った。

有麻と鳴海くんはお互いに特別な感情を抱いていたことを知る。

「たぶん、あの気持ちはなんやったんやろって、気になっているだけ」

有麻は今回の東京旅行で鳴海くんにその時の感情を確認しようと思い立った。

特別なことだけが人生じゃない

この物語は有麻の1週間を丁寧に書いている。
有麻の見た景色や考えたことを詳細に語る。
それはまるで都会の綺麗な映像作品を見ているのではないかと思わせるものであった。

しかし物語の筋道をなぞろうとすると、とても心もとない。

というのも何も起こらないのである。

例えば東京旅行中、有麻はしょうちゃんという男の家に泊まっているのだが、そこでもなにもない。
また鳴海くんとの間に何が起こるわけでもない。
――鳴海くんには有麻とは関係のないトコロで新事実があるが。
さらに鳴海くんの風変りなストーカーである凪子と有麻もよくわからない関係性を保ったまま最後を迎える。

もちろん、最後に鳴海くんと有麻は会うことはできるのだが、
例え彼らが会わなくとも、あるいはこの本の途中で、紙がきれて最後まで読めなかったとしてもこの作品に関していえば問題ない。

なんだか「NHKドキュメント72時間」にすごい近いものを感じる。

誰かの生きている72時間。
――そこにはあっと驚くような事実や、物語はないけれど、生きている人間の姿が映されている。

この本も同様で、いま生きている人の姿が丁寧に描かれている。

また会う日まで (河出文庫) [ 柴崎友香 ]
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”好きなのになぜか会えない人がいる……OL有麻は25歳。あの修学旅行の夜、鳴海くんとの間に流れた特別な感情を、会って確かめたいと突然思いたつ。有麻のせつない1週間の休暇を描く話題作!”

おすすめ関連本

柴崎友香さんのおすすめ本は、「きょうのできごと」で、京都の夜に集まった4人の小さな物語を丁寧に描いた作品です。
この世界は広くて、いろいろなことが起きている。
特別なことだけが語られるべき人生じゃないと教えてくれました。

また本書の解説をしている青山七恵さんの「優しいため息」も人生は何もないコトの連続と云うのを教えてくれました。

やさしいため息 (河出文庫) [ 青山七恵 ]
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【書評】人生とは何気ないデキゴトの連続『やさしいため息』青山七恵
青山七恵が書いた『やさしいため息』。今日はどんな一日だった? 4年ぶりに再会した弟が綴るのは、嘘と事実が入り交じった私の観察日記。立ちこめる湯気の中、私は冷たい肌が温まっていくのを感じている......。『ひとり日和』で芥川賞を受賞した著者が描く、OLのやさしい孤独。

 


 

こういう作品を読むと肩肘張って生きなくてもいいんだよと云われているようで、楽な気持ちになりますよね。

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