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【書評】今よりずっと闇が深かった時代について『怪獣』岡本綺堂

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現代よりもずっと闇が深かった時代。
「今の人なら無論にさう考えへるでせう。」
怪奇譚と探偵譚が入り混じった短編集。


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著者:「岡本綺堂」情報

岡本綺堂は、小説家、劇作家。本名は岡本 敬二。別号に狂綺堂、鬼菫、甲字楼など。新歌舞伎の作者として知られ、また著名な作品として小説「半七捕物帳」などがある。 養子の岡本経一は、出版社「青蛙房」の創業者であり、社名は綺堂の作品「青蛙堂鬼談」に由来している

「怪獣」抜粋

自分の裸体の写し絵を取り戻してくれと泣く娘の話「恨の蠑螺」、美しい娘に化けた狐にとりつかれる若い歌舞伎役者の話「岩井紫妻の恋」など、動物や道具を媒介に、異界と交わるものを描いた綺堂自選の妖異譚集最終巻。全十二篇に、附録として単行本未収載の短篇一篇を添える。

今よりずっと闇が深かった時代について

夜、外に出るとどこを見渡しても灯りがある。街灯、コンビニ、住宅から漏れる優しい明かり。それらはどれも明るく力強く、消えそうもない。
だからたまに街灯の少ない道で、その街灯が点滅していたりすると、どこか不安になる。
後ろから足音が聞こえてくるように、自分の影が誰かの顔のように、ふっと獣のようなものが横切ったと思って目を凝らすと、捨てられたビニール袋だったり。

月は無いが、星は明るい。少し距れたところにはたばこ屋の軒ランプがぼんやりと点つている。

星の明るさが今よりずっと明るく見えた時代、遠くにあるランプが唯一の光源だった時代。
この時代は怪異譚が信じられてもおかしくないだろう。今でさえ、少し裏道に入った瞬間、恐怖を感じるほどである。

この物語はそんな時代が描かれている。
狐、蛇、鯉、人形に取り憑かれた怪異譚があれば、それらが信じられていたことを逆手に取った事件が起こる探偵譚もある。

私はこの世界がとてつもなく愛おしい。
想像力が豊かだった時代。今なら馬鹿にされるような想像も科学的に証明されていなかった時代。

この時代にカップ焼きそばを作って、シンクがぼんと跳ねたとき、これは焼きそばの呪いになるのだろうか。

わたしは翌朝、会社の方へ鳥渡顔出しをして、直ぐに根津へ廻らうと思つてゐのであるが、会社へ出ると矢はり何かの用に捉へられて、午前十一時頃にやうゝ自由な身になった。

なにが愛おしいって、
何よりこの時代の人の自由に豊かに生きている感じが羨ましい。

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