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岩波文庫的 ってなに?  直木賞受賞作『月の満ち欠け』の感想は?

本の感想
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「これはすごい」読了後、思わずそう呟いた骨太エンタメ文学小説

直木賞を受賞した『月の満ち欠け』というタイトルは当然聞いたことがあったし、いつかは読みたいと常々思っていた。

それが書店で、「岩波文庫」として売られていたので思わず手にとってしまった。

まさか、それが「岩波文庫的」とかいう洒落の効いた文庫なんて気が付かずに。

「格式高き岩波文庫」と「謎多き岩波文庫的」

そもそも岩波文庫とは、多くの人々が手軽に学術的な著作を読めるようになることを目的として創刊された日本初の文庫本のシリーズで、ジャンルは古典的価値を持つ書物と書かれている。

とはいえ、岩波文庫にも近現代文学が収録されることもある。

岩波文庫 緑帯検索

ただ見てもらえればわかると思うが、それなりに学術的な小説が多い。

つまり、『月の満ち欠け』は岩波文庫に分類させることができなかった。そこで登場したのが「岩波文庫的」という文庫レーベル。

「岩波文庫」への収録も検討しましたが、長い時間の評価に堪えた古典を収録する叢書に、このみずみずしい作品を収録するのは尚早と考え、でも気持ちは岩波文庫という著者のちょっとしたいたずら心もあり、「岩波文庫的」文庫になりました。

この取り組みは、作者である佐藤正午が望んだ『月の満ち欠け』という作品は偉い作家が書いた本だと思って読まないでほしいという考えをうまく表現している。

佐藤正午といえば、めちゃくちゃ面白い小説を書くけど、メディアにまったく出てこない堅ぶつなのかとわたしも思っていた。

さすが岩波文庫から小説も出せるのかと驚き、まんまと騙され、気づいたときは思わず吹き出した。

輪廻転生の純愛物語

小山内堅という男が東京ステーションホテル2Fについたところから本書の幕があがる。

彼は約束していた店に行き、そこで約束していた緑坂ゆい、そして娘の緑坂るりとあった。
もうひとりの参加者である三角くんはどうやら遅れてくるらしい。

小山内は緊張している。
それもそのはずで緑坂ゆいの娘、緑坂るりは、小山内の事故死した娘、小山内瑠璃ではないかという疑念があった。

小山内は必死にそれを否定しようとするのだが、

「どら焼き、嫌いじゃないもんね。あたし、見たことあるし、食べてるとこ。一緒に食べたことがあるね、家族三人で」

と、るりは言った。

「小山内さん、こっちをよく見て。あなたが混乱しているのは、それは、あたしだってわかってるんだよ。でも、今日東京まで出てきてくれたのは、あたしに会うためでしょう? いろいろなことを考えた結果、自分で決めたことなんでしょう? なんでいまさら、びくびくするの?」

と7歳のるりは言った。

本書の幕開けは、小山内堅という男が東京ステーションホテル2Fについたところからだが、物語の始まりは、三角哲彦と正木瑠璃が出会ったことである。

月のように生と死を繰り返す。そして未練のあるアキヒコくんの前に現れる

ふたりの出会いから始まる骨太の物語は、最後読者に感動と達成感を与えてくれる。

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