いぬじゅん作 スターツ出版文庫刊行の『奈良まちはじまり朝ごはん』の感想は心が洗われる作品でした

本の感想 本の感想

 

疎水
疎水

どこでも住んでいいよと言われたら、迷わず奈良に住みたい。
そんな大好きな奈良が舞台の本作は、奈良の魅力がたくさん詰まっていました。

【書評】美味しいご飯/魅力的な常連客/奈良の魅力が詰まった『奈良まちはじまり朝ごはん』いぬじゅん

奈良の魅力がたっぷり

皆さんは、奈良にどんな印象を抱いているだろうか。
私は今でさえ、奈良が大好きになったが、昔は「都の下位互換じゃないのかしら」、なんて思っていた。
しかし実際に奈良に訪れてみると、のんびりとした空気感、ふわっとした優しい空気感は、京都にはないものだと気が付いた。
1度目の訪問で、私は奈良の虜になった。

それ以来、奈良を舞台にした小説を探しているのだが、京都を舞台にした小説が多くあるのに比べて、
奈良を舞台にした小説というのはあまり見かけることがなかった。

だからこの本を手にしたとき、「がっかりしたくないなあ」という思いがあった。
奈良を名乗ってるんだからちゃんと奈良の魅力を教えてくれよと願うように読みはじめた。

読んでる途中、私は何度も奈良に行きたいと思った。
それはいぬじゅんが書いた『奈良まちはじまり朝ごはん』がなせる技だった。
本書は奈良の魅力がたっぷりと詰まった作品であることは間違えない。

奈良まちはじまり朝ごはん (スターツ出版文庫)

 

疎水
疎水

本書の魅力は、

  • 美味しいご飯
  • 魅力的な常連客
  • 奈良の魅力

でした。

元気が出て、心洗われる1冊

本書は「奈良町通り」のベンチで主人公の詩織が途方に暮れているところから始まる。
なぜ途方に暮れているのかというと、彼女の会社が倒産したのだ。それも新卒入社初日に……。
大手に入れたということで、意気揚々と奈良に引っ越してきたのにという思いが頭を重くして、詩織はベンチに座り込んでしまったのだった。

そろそろ立ち上がらないといけないと思っていると、「お前、泣くのか?」という声がした。
声の在処を探すと目の前に太った猫がいて、猫が喋っていると驚愕すると、ベンチの後ろであきれた顔の男が詩織のことを見ていた。

これが雄也と詩織の出会いだった。

雄也は詩織が座っていたベンチの後ろでお店を開いていて、その店は朝ご飯専門のご飯屋さんだった。
それもメニューはなく、毎日日替わりという殿様商売というかなんというか。

雄也は泣きそうな詩織を店に招き入れ、朝食をごちそうする。

最初にお腹に入れるものが温かい食べ物ならば、人の心は元気になれる

雄也はそう言って詩織に「西洋卵焼き」を提供した。
詩織はそれを食べながら雄也に現状を話していると涙が止まらなくなった。
それを雄也は黙ってみていてくれた。

泣いた方がいい。自分の悲しみに蓋はしないほうがいい。

泣き止むと詩織は驚くほどさっぱりしていた。

雄也はそんな詩織に1つの提案をする。
それは詩織にここで一緒に働かないかという提案だった。

そんなひょんなことから朝ご飯専門店で働くことになった詩織は、雄也に止められるのに構わず、お客さんの悩みを解決してあげようと奮闘する。
朝ご飯を通して人々と交流し、人々の1日を応援する元気がもらえる1冊。

本書の魅力は、大きく分けて3つだ。

  • 美味しいご飯
  • 魅力的な常連客
  • 奈良の魅力

美味しいご飯は、親切なことにレシピまで掲載されている。
私が特に気になったのは「じんわり心温まる奈良の伝統食 ならまち茶粥」だ。

息を吹きかけてからゆっくりと口に運ぶと、小野さんは茶粥を食べだす。
「ああ、なつかしいなあ」
心の奥からこぼれたような声をだしてから、彼は声を押し殺して泣いた。

ただ単に1食が紹介されるだけでなく、そこに1つの物語が与えられているので、よりその1食に興味が沸く。
レシピも非常にシンプルなので、ぜひ作ってみたい。

さらに魅力的な常連客も本書には欠かせない。
感情で動くおせっかいな「詩織」、寡黙で不器用だが優しい心を持った「雄也」に加え、
天真爛漫な中学生の「夏芽ちゃん」、隣の寺院の住職で雄也に恋する坊主の大男「和豆」、園子ちゃんと呼んでとガハハと笑う「園子ちゃん」。
奈良に住む人の温かさが伝わる常連客たちに物語を通して出逢ってほしい。

最後に、本書は奈良の魅力にも触れている。
例えば奈良通りの古風な街並みは何度も登場し、私の心をひきつけるし、最後の章では『燈花会』の魅力についても語られる。
『燈花会』についてはぜひ本書を読んで欲しい。もう私は奈良に行きたくてたまらない。

これが奈良だ。

雄也のこの言葉が本書に描かれた奈良の魅力を一言で表している。

美味しいご飯、温かい常連客に心が洗われる1冊。
さらに気になる雄也の過去、続編が気になって仕方ない。

奈良の『ならまち』のはずれにある、昼でも夜でも朝ごはんを出す小さな店。無愛想な店主・雄也の気分で提供するため、メニューは存在しない。朝ごはんを『新しい一日のはじまり』と位置づける雄也が、それぞれの人生の岐路に立つ人々を応援する“はじまりの朝ごはん”を作る。-出社初日に会社が倒産し無職になった詩織は、ふらっと雄也の店を訪れる。雄也の朝ごはんを食べると、なぜか心が温かく満たされ涙が溢れた。その店で働くことになった詩織のならまちでの新しい一日が始まる。

疎水
疎水

正直、スターツ出版文庫ってことでなめてました。
早く続編が読みたい――!

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