《随時更新中》夏に読みたい本をまとめました

恋愛、家族、過去を持たない男が都会で起こしたファンタジー『リレキショ』中村航

本の感想
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【書評】中村航のデビュー作『リレキショ』は文藝賞受賞の偉大な作品

この作品は偉大すぎる。

なんと言ったって、「面白い」。
文句なしに面白い。

そしてこの作品が偉大である最大の所以は、本作が中村航のデビュー作であること。

つまり――、
この作品のおかげで、中村航は作家として多くの人に幸せを届けれるようになった。

リレキショ』は世界に無数とある分岐点の中の1つだが、中村航本人、そして中村航を敬愛する人たちにはとても大きな分岐点だった。

ありがとう、『リレキショ』、
そしてありがとう、「文藝賞」。

あらすじ

幕開けは主人公である良がバイトをしようと思い履歴書を書いているシーンから始まるのだが、良は過去の記憶を持っていない。

《半沢良》という名前も《姉さん》に拾われてきたときにつけた名前だった。

良が記憶を失った理由が明記されていなければ、拾われたときの詳細も書かれていない。

ただわかるのは《姉さん》はちょうど弟が欲しかったらしいことと酔っていたこと。

良は履歴書になんて書けばいいのかを姉さんに相談すると、彼女は「好きに書けばいいのよ。良でいくならね」と言った。そして学歴で悩んでいると、「なりたいものになればいいでしょう」と続けた。

ただ、

「嘘はだめよ」
「そう、正直。適当はいいけど嘘はダメ。好きなことを好きなように、正直かつ大胆に書こう」

姉さんの言葉を胸に正直で大胆な履歴書作りのおかけで、良は無事ガソリンスタンドのバイトに合格した。

深夜ガソリンスタンドで働き始めた良は先輩であり、おしゃべり好きの加藤さんと息のあった給油をするようになる。

働き始め3週間、お互いの休憩時間を得るため、1時間だけひとりで仕事をする時間を設けることになった。

彼はその時間を使い、姉さんの友達にもらった自転車のサビを落としていた。

「油を注してチェーンを送り、また油を注してはチェーンを送った。」そしてふと目を顔を上げたとき、「彼女はただそこにいた。月から降りてきたみたいに、そこに佇んでいた。」

それが良と漆原玲子との出会いになる。

彼女は原付きを引いて現れた。
そして普通の客と同じように給油をし、お金を払った。

ただ彼女が普通のお客さんと違うのは、白い封筒を良に渡したこと。

それは普通の客ではありえない行為なのだが、彼女は「ごくごく自然にそれを行った。」

そして、良はそれを受け取った。

都会のファンタジーで日常

こんなこと、たぶんきっと、ありえない。
記憶をなくしたことや、誰かに拾われたこと、そしてもらった不思議な手紙と恋物語?

ありえないからこそ、ファンタジーで夢物語なのだが、たんたんと進むこの物語は、それをまるで普通の日常のように思わせる力がある。

それは現実離れ、浮世離れした登場人物たちのせいかもしれない。

浮世離れしているはずの彼らが感じさせる親近感が物語をより身近にしているのかもしれない。

読み進んでいるうちに、その世界にどっぷりはまり、彼らに会いたくなる。

キュートな登場人物と妙に癖になる言い回しは、デビュー作である本作でも健在だった。

中村航がこの世に送り出した――、
中村航をこの世に送り出してくれた1冊。

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