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梨屋アリエの『プラネタリウム』は不思議なだけの作品じゃありませんでした

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【書評】不思議な物語という服に隠された心の中『プラネタリウム』梨屋アリエ

梨屋アリエが書く恋愛小説

小説家に対して「変わっている」と言うのは褒め言葉になるのだろうか。
褒め言葉だと捉えて言わせてもらうと、『プラネタリウム』の作者である梨屋アリエは変わっている。

通称(自称)「ありりん」。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

Wikipediaにあるこの破壊力はすごい。
そんな梨屋アリエの書いた「恋愛モノ、純愛モノの短編」小説はやっぱり変わっているのだが、不思議と読んでいるうちに変わっている部分が気にならなくなる。それどころか絶対にありえない状況なのに、感情移入までしてしまう不思議な作品だ。

登場人物が抱えた悩み

本書は主人公の美野里が付き合ってもいない男の子から振られるところから始まる。
「新学期の朝、つきあったつもりのない他校の男から、突然の別れ話……。笑える。」
こんな衝撃的な幕開けから物語は始まるのだが、すぐにそれを超える衝撃的なできごとがおこる。
空からコーンフレークに似た透明な雪のような破片が降ってきたのだ。
しかもそれがとても美味しそうで、美野里は我慢できずに、口に含んでしまった。

感動! あたしは叫びたいのを堪えて、その場でバタバタッと足踏みをした。
すると急に、体が浮いたような感じになって、ドキドキした。熱い空気を吸ったように肺がカーッとなって胸や背中全体がぽかぽかあたたかくなって、手にうっすら汗をかいた。

しかしなぜ「青いフレーク」が空から降ってきたのか。
どうやら、1年生の女の子が大学生くらいの男をじっと見ていたのが原因らしい、と美野里は気がついた。
彼女の恋が「青いフレーク」を降らしていることに。―― そして「青いフレーク」は恋の味だということに。

美野里は恋をしたことがなかったので、恋の味を知らなかったのだ。
彼女は「青いフレーク」をもっと食べたいと1年生の女の子に協力することにしたのだが――。

恋する女の子と「青いフレーク」を通して、美野里は恋のいろんな味覚をの虜になってしまった。
その味を知った彼女は思うのだ。

あおぞらが、ばりばりっと砕け落ちるような、世界が違って見えてしまうような熱烈な恋をしてみたい。
あたしにもいつか、そんな恋ができるのだろうか。

第2編『飛べない翼』では「背中に翼が生えた男の子」や「砂に埋もれてしまう女」、3編『水に棲む』では「足の下に15センチの空間ができた男の子」や「水になる女」、4編『つきのこども』では「木になった女の子」「月に帰りたい女の子」が登場する。

この本の魅力はこの不思議な登場人物たちだ。
彼らの変わった特徴は、彼らの悩みに起因していることが読んでいくうちに明らかになっていく。
梨屋アリエの『プラネタリウム』は見事に、難しい内面の悩みを可視化することに成功している。誰もが持つ様々な悩みを浮き彫りにして、ひとつの特徴として掲示している。
沢山の不思議な特徴が出てくるのだが、それはあくまでも誰もが持つ悩みの象徴でしかないので、気にせず読んでいるうちに感情移入できるのだ。
梨屋アリエの『プラネタリウム』はただの不思議な物語でなく、ファンタジーの体をなすことで、軽やかに人間の内面に迫る魅力的な作品だ。

恋をしたことがないのに恋多き女と誤解されている中学生の美野里。付き合ったつもりのない相手から新学期早々に別れ話を切り出されてしまう。その時、美野里のもとに青いカケラが落ちてくる。それは後輩の恋心が結晶してできたフレークだった(「あおぞらフレーク」)。東京の“世界谷”を舞台に描かれた4つの不思議な物語。

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