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【書評】美しくて愚かで、どうしようもないほど馬鹿げた青春時代へ『星か獣になる季節』最果タヒ

本の感想 本の感想

こんにちは。

とんでもない作品を読みました。
この感情を抱いたのは、初めて舞城王太郎を読んだとき以来――。

本日は最果タヒの「星か獣になる季節」をご紹介させていただきます。

この作者、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の原作者だったんですね。
映画も最高でした。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』予告編

星か獣になる季節を読んで

17歳は、星か獣になる季節なんだって。

17歳という年齢

かって17歳であったすべてのヒト。あるいは17歳のキミ、そしてこれから17歳になるキミたち。

17歳とは、とても勢いがあって、馬鹿で、それでいて利口で、どうしようもないほど利己的だ。

いじめが後を立たず、先生が鬱になって、それでいて笑顔が絶えない学校の、その気味が悪いほど矛盾した世界で私たちは生きていた。

でもそれは仕方ない。
だって私たちは学校という狭い社会で、自分というアイデンティティを持ち続けなければいけないのだから。そのために他人が犠牲になろうとも、それは仕方ないことなのだ。

「青春を軽蔑の季節」と作者は云う。
「愚かさの象徴で、だからこそ、1番に懐かしい」と。

青春はそんな季節だ。
青春の真実なんてそんなものだ。
青い空に白い雲なんて綺麗で美しいだけのものじゃなくて、恥じらいと愚かさもそこにはある。
だから私たちはあの季節を忘れることができないのだ。

青春の見せる裏と真実について

この物語はそんな青春を描いた作品だ。

主人公の山城は地下アイドルの応援を生き甲斐にしているのだが、その地下アイドルが殺人を犯して捕まったという。
「かわいいだけで努力しか取り柄のない凡庸なアイドル」に殺人なんかできないと、同じくアイドルファンで、クラスのイケメン森下
と真相を追い始める。

「きみはかわいいだけだ。凡庸で貧弱な精神、友達だけが社会で、僕らのことを光のかたまりぐらいにしか見てない。だからぼくは軽蔑ができた。」

山城のアイドルへの思いは軽蔑からきている。学校でカースト最下位にいる彼は、学校外で軽蔑できる存在がなくてはならない。そうしないと彼のアイデンティティが保たれないからだ。
そしてその存在に、地下アイドルが選ばれだ。

しかしその彼女が殺人を犯したという。
今まで「凡庸」だと思っていた彼女を「非凡」であると認められない彼は、彼女が殺人を犯したということを思いたくなかった。

そこでみずから調査をしようとする。彼女の家に仕組まれた盗聴器を聞きに行くと、クラスメイトの森下と出会った。
森下はスクロールカースト最上位にいる男で、誰にでも差別しない。
そんな彼も彼女のファンであった。

その後、物語は彼女の冤罪を晴らすという様相から、彼女の身代わりになろうという風にシフトしていく。
そのために森下は彼女がやった犯罪の模倣殺人を繰り返していくのである。

軽蔑を知らない森下だらこそ、誰でも平等に殺すことができるのか。
そうであれば、他人を軽蔑しながら生きていくほうが正しいのか。
あるいは17歳という季節が彼をそうさたのか。

「星か獣になる季節」を読了後、このタイトルの意味にハッとさせられる。

同収録の「正しさの季節」はこの事件の2年後を描いたものになる。
見る角度によって「正しさ」というものは変わってくる。この事件を元に矛盾を描ききった作品である。

おすすめ関連本

文体がそう思わせるのか、あるいは疾走感のある物語がそう思わせるのか、私はこの本を読んでいて、舞城王太郎を思い出しました。

同じような勢いが舞城王太郎のデビュー作にもあるので、ぜひ読んでみてください。

あと個人的に映画も面白かったので「夜空はいつでも最高密度の青色だ」もおすすめします。
私が読めていませんが……。

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