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【書評】爽やかにやれよ『あなたがここにいて欲しい』中村航

本の感想 本の感想

こんにちは。

私が中村航を読んだのは、確か中学生の時で、当時はどんな感想をいだいたのだろう。――それ以来読んでいなかったので、あんまりはまらなかったのかもしれません。

ただ最近、中村航の魅力に取り憑かれました。
個人的にすごく不思議な作家、中村航

今回は「あなたがここにいて欲しい」という作品を読んだので、紹介させてください。

「あなたがここにいて欲しい」を読んで

物語の始まりについて

「いや、小田原と云えばさ、吉田くん」
と、守谷のあんぱんを片手に城址公園で象を見ている吉田くんに私は云いたい。
「柳屋ベーカリーのあんぱんでしょう、柳屋ベーカリーのあんぱんが1番だよ」

はたして吉田くんはどんな顔をするだろう。
だって吉田くんは、

守谷のあんパン以外をあんパンと認めてこなかったし、これからだって認めない。

――そんな男だ。

物語は吉田くんが幼稚園のおでかけで行った小田原城から始まる。そこで彼は象に出会って、その大きさに三百ギガワットの雷撃を食らうような衝撃を受けた。

そうして大学生になった吉田くんは、再び象を見に小田原に向かった。

あなたがここにいて欲しい――。

と愛される象は、まだ象は鼻を揺らして生きていた。

その話を大学の研究所にいる舞子さんにかまぼこをつまみながら、吉田くんはする。

吉田くんは何故だかいつも、舞子さんの前では饒舌になった。どうしてなんだろう、と、話しながら思う。

鈍感な吉田くんの物語は、舞子さんとの今後、そうして吉田くんの今までというふうに、改めて語られていく。

ヤンキー、文明人、そしてファンシー

吉田くん、又野君――、
「君たちコンビはまったく、最高だぜ」、と私は云いたい。

なんたって、又野君はヤンキーのくせに世の中を知っている。
なんたって彼は高校生の時に、

「世の中には結局、ヤンキーとファンシーと文明人しかいないんだよ。だからナオは文明人になれるよ」
「ああ、ナオならうまくやれるよ、爽やかにやれよ」

とセリフを残したくらいである。

さすが又野君。
「爽やかになれよ」だってさ、
時には歯を折りながらも生き方を自ら模索しているだけある。

そしてヤンキーとは反対にいる吉田くん。
彼はなんたって、始めて舞子さんとかまぼこを食べた日を、「かまぼこ記念日」と名付けてしまうほどである。

そんな彼は思っているのである。

爽やかにやろう、と吉田くんは思った。
文明人は知性を秘めて、爽やかに返事をする。呼ばれたら、はいー、と応えて笑顔で振り返ろう。

この彼の思いが私には愛おしい。
きっとこの「はいー」は語尾になるに連れて細く高くなる「はいー」である。

「吉田くん、頑張れ」
思わず私は吉田くんにエールを送る。
「――でもね、小田原と云えばさ、吉田くん。柳屋ベーカリーのあんぱんでしょう、柳屋ベーカリーのあんぱんが1番だよ」

はたして吉田くんはどんな顔をするだろう。
だって吉田くんは、世界で一番強い動物をライオンと答えたサザナミに、

こいつは二十年以上も生きてきて、ゾウの圧倒的な力を感じたことがないのだ。そんなこと小田原では、幼稚園児だって知っていることだ。

――そんな理不尽な考え方をする、そんな男だ。

吉田くん、久しぶり?

吉田くんと舞子さん。
ふたりにどこか既視感を感じるのは、
夏休み」だと途中で気がついた。

中村航作品、「夏休み」。

吉田くん、君は友人に「離婚するときは一緒にしよう」という約束をしたうえで、なぜかふらりと放浪の旅に出て、2組のカップルを離婚の危機に追い込んだ吉田くんでしょう。
カメラ分解の趣味も一緒で、間違いない。

「吉田くん?」
と私が聞いたら君は、
「はいー」、と応えて笑顔で振り返るに違いない。

懐かしいあの日々、温かな友情、ゆっくりと育む恋―常に目立たず控えめな吉田くんは、さまざまな思いを秘めて大学生活を営んでいた。小学校時代の図書室での幸福感。小田原城のゾウ、親友でヤンキーの又野君、密かに恋心を寄せる舞子さん…。やがて、高校卒業後に音信が途絶えていた又野君と再会。2人に去来する思いとは。そして舞子さんとの恋の行方は?(表題作より)名作「ハミングライフ」を含む、新たな青春小説の傑作。

おすすめ関連本

もし未読であれば、ぜひ「夏休み」を読んでみてください。
吉田くんと舞子さんのその後が描かれている物語です。
夏休み」での彼らはなぜか離婚の危機に追い込まれていて、なぜか、回避するには「スマブラ」が強くないといけないという、なんとも非現実な話ですが、吉田くんがいればそんなことも現実になってしまうのかもしれません。

なんたって彼は、「こぎれいな服を着て、歌うように世界を歩」く――、そんな男なのですから。

「十日間ほど留守にします。必ず戻ります」。吉田くんの家出がきっかけで訪れた二組のカップルの危機?!ユキと舞子さんの書き置きに導かれて、僕と吉田くんのひと夏の不思議な旅が辿り着く場所は―キュートで爽やか、心にじんわりしみるとびっきりの物語。

 


いかがでしたか?
まだ読んでない人はこの出会いを機に手にとってみてください。

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