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【書評】痛々しいほどのリアル『桐島部活やめるってよ』朝井リョウ

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「だってそういう子達って、なんだか制服の着方から持ち物から字の形やら歩き方やら喋り方やら、全部が違う気がする。何度も触りたいと思ったくしゃくしゃの茶髪は、彼がいる階層以外の男子がやっても、湿気が強いの? って感じになってしまう。
少し短めの学ランも、少し太めのズボンも、細く鋭い眉毛も、少しだけ出した白いシャツも、手首のミサンガも、なんだか全部、彼らの特権のような気がする。」
「なんで同じ学生服なのに、僕らが着るとこうも情けない感じになってしまうんだろう。」
高校生の学校生活、スクールカーストが痛々しいほどリアルに書き上げられた作品。


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「桐島部活やめるってよ」を選んだ理由

もうきっと何度も再読しているんだろうなあ、と思って記録を辿ると、2012年9月に読んだっきり1度も手にとっていなかった。それなのにこの印象は多分映画を見たことも影響してるんだろう。
当時はなんで読んだのだろうか。文庫化発売が2012年4月。きっと「すばる新人賞」とのことでチェックしていたのだろう。今回はなんとなく青春小説が読みたくなって、手に取った。

著者:「朝井リョウ」情報

岐阜県垂井町出身。岐阜県立大垣北高等学校、早稲田大学文化構想学部卒業。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビューし、2012年には同作が映画化。2012年、『もういちど生まれる』で第147回直木三十五賞候補。2013年、『何者』で第148回直木三十五賞受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少となる[1]。直木賞受賞後第一作『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。2016年、英語圏最大の文芸誌「Granta」日本語版でGranta Best of Young Japanese Novelistsに選出される。

「桐島部活やめるってよ」抜粋

田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。

痛々しいほどのリアル

この物語は、現代の学校によく見られるスクールカーストをリアルにかきあげた群像劇である。
それぞれ焦点を当てられる登場人物は、

  • 菊池宏樹
  • 小泉風助
  • 沢島亜矢
  • 前田涼也
  • 宮部実果
の5人で、スクールカーストのレベルでざっくり表すと、

  • 菊池宏樹(S)
  • 小泉風助(A?)
  • 沢島亜矢(B)
  • 前田涼也(C)
  • 宮部実果(S)

、となる。

高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。英語とか国語ではわけわかんない答えを連発するヤツでも、ランク付けだけは間違わない。大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。
上か下か。(中略)
この判断だけは誰も間違わない。

この言葉はCランク「前田涼也」の台詞だが、他の4人もその判断は間違わない。

物語の本筋は、

「桐島が部活辞めるってんの、マジなんけ?」

と桐島が部活を辞めるというデキゴトから展開する。

桐島が部活を辞めることで、


リベロの座を掴んだ風助(A?)は、副キャプテンからキャプテンへと昇格した孝介(S)と比較しながら、「俺は嬉しいんだ。桐島がいなくなって。」という卑屈な感情に絡め取られる。
桐島の部活を待つ間に外でバスケをしていた竜汰(S)を見ながら部活をしていた沢島亜矢(B)は、桐島を待つ必要がなくなったせいで竜汰を見れなくなる。
前田涼也(C)は桐島がいなくなったことで体育館の使用方法が変わり、中学の時によく映画の話をしたカスミ(S)へ創作映画のカメラを向けることになった。
宮部実果(S)は桐島の彼女である理紗(S)といつも桐島が部活を終えるのを待っていたが、その必要がなくなった。
菊池宏樹(S)は桐島が部活と向き合ったうえで部活を辞めた桐島や映画を真剣に撮る涼也(C)と自らを比較する。

 

と、5人にはそれぞれ影響をもたらしながら、彼らは周りを見渡しながら自分の生き方、周りとの違いについて考える。

朝井リョウはやっぱりエンターテイメント作家で、この物語にも最後まで読むと仕掛けが隠されている。果たして桐島はどんな人物なのか。

制服を着こなせない人の心境も、着こなす人の心境も、痛いほどリアルである。
カーストの低い人、高い人、その全てをリアルに書き切っている。
野球部が甲子園を目指す話、バンドを結成する話、高校生の時にしかできないことをやった小説は数多くあるが、この本が本当の青春小説である。
本当の青春は、感動だけじゃない。痛くて恥ずかしくて、決して見事なものじゃない。
青くて爽やかに書かれる青春小説よりも、よっぽどリアルな青春がここにある。

「朝井リョウ」のおすすめ本

この本を読んだひとにおすすめの本

  • 「蹴りたい背中」綿矢りさ
  • 「ぼくは勉強ができない」山田詠美
  • 「檸檬のころ」豊島ミホ

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