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【書評】第160回 直木賞候補! 『熱帯』森見登美彦

本の感想 本の感想

第160回 直木賞候補作品。
汝にかかわりなきことを語るなかれ
しからずんば汝は好まざることを聞くならん
ここに「熱帯」の門は開く。


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著者:「森見登美彦」情報

1979年奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。

「熱帯」抜粋

汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。
この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは?
秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。
幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!

ファンタジー小説家 森見登美彦

森見登美彦の小説と言えば?
という問いかけをすると、たぶん多くの人がヘタレ大学生が主人公の青春小説と言い、「太陽の塔」や「四畳半神話大系」「夜は歩けよ短し乙女」をあげるだろう。

だがしかし森見登美彦はそもそも「太陽の塔で」「日本ファンタジーノベル大賞」でデビューしているのである。

それがいつの間にか、森見登美彦=京都のヘタレ大学生というイメージを持つようになってしまった。
しかしよくよく考えてみると、京都のヘタレ大学生が出てくる作品でも、

  • 「太陽の塔」→叡山電車が京都の街を大驀進。
  • 「四畳半神話体系」→四畳半から出られなくなる。
  • 「夜は歩けよ短し乙女」→京都の町をヘンテコな物体が走り回り、強大な風邪が京都を襲う。

というようにファンタジーが隠れているのである。
――隠れる気はないのかもしれないが、ヘタレ大学生が面白すぎて、ファンタジー要素が必然的に隠れているのである。

そのことに気がつかずに、「ペンギンハイウェイ」を読んだときは、「ヘタレ学生は? 京都の町並みは?」となんだか失望した気がしたが、読んでいるうちに物語に飲み込まれるようになった。

森見登美彦の小説は魅力的な登場人物、魅力的な町並みが勢力をあげているが、それを読ませている物語に力があるのである。

ヘタレ京都の学生が主人公を占めることが多い森見登美彦の作品だが、「四畳半王国見聞録」を最後に登場していない。
その後は「聖なる怠け者の冒険」「有頂天家族 二代目の帰朝」「夜行」と続くがこの3作で、ヘタレ大学生だけが森見登美彦じゃないと私に知らしめてくれた。

奇しくもこの3作は作家デビュー10周年企画の作品である。森見登美彦はデビュー10年を期にイメージから脱却手して、新たな境地に到達したのである。

そうして「熱帯」である。

熱帯に閉じ込められて

とはいえ、先程から書いていたように、隠れていただけで、読ませるストーリーはずっとあった。しかし今回「熱帯」ではその力が溢れ出んとしているのである。

この物語のあらすじを書くのは難しい。

「熱帯」という小説があるのだが、それを最後まで読み切った者はいないという。「熱帯」に魅せられた人はその謎を探ろうとする。
その謎はどういうものなのか――。

と簡単に言えば言えるのだが、物語は本当に入り組んでいる。

森見登美彦の「熱帯」の中で、森見登美彦が「熱帯」について調べている。ある女性が森見登美彦に「熱帯」の話をする。話の中で「熱帯」魅せられた人たちが「熱帯」を調べている。ひとりの人が「熱帯」にたどり着き、「熱帯」の物語が語られる。――……。

正直、私も物語を本当に理解できていないのかもしれない。
しかしそんなことどうでもいいと思えるほど、面白いのである。
話しが入り込んでいてたまにわからなくなる(頭がついていけないので)ので、つまらなくなるかと思いきや、そんなこと関係ない。どんどんどんどんページをめくる手がとまらないのである。――、数ページ前なんかよりも、とにかく先が読みたくて仕方なくなるのである。

熱帯に魅せられた人たちがこの物語には多数登場するが、気がつくと私もどうしようもないほどその魅力に取り憑かれている。
しかし私はどの「熱帯」に取り憑かれたのか。あるいは「熱帯」は複数あるのか。もしかして本当は存在なんてしていないのかもしれない。

本を読み終わったあとも私の中で「熱帯」は熱く体温を持ってそこにいるのである。

さあ「熱帯」を調べに行きましょう。
ここに「熱帯」の門は開く。

「森見登美彦」のおすすめ本

聖なる怠け者の冒険

作家デビュー10周年企画作品 1作目。
2014年本屋大賞ノミネート作!
みんなで選ぶ第2回 京都本屋大賞受賞作!


夜行

作家デビュー10周年企画作品 2作目。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
森見登美彦のデビュー10周年の集大成。


総特集 森見登美彦: 作家は机上で冒険する! (文藝別冊)

この本を読んだひとにおすすめの本

七時間半

昭和のストーリーテラー。
東京から大阪が7時間30分かかっていた頃、特急列車「ちどり」を舞台にしたドタバタ劇。
7時間30分にそんなに詰め込むのかと思われるほど事件が起きる。恋愛から爆弾まで何でもありの7時間30分!


ランボー怒りの改新

森見登美彦氏、激怒!?
という帯でモリミーファンを虜にした。
「私の奈良を返してください!
さすがにこれはいかがなものか!
しかし、悔しいが傑作と認めざるを得ない」

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