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ミス・マープルへ敬意を払って。階知彦の学園青春ミステリ『火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵―』

本の感想 本の感想

【書評】青春、学園、ミステリ『火曜新聞クラブー泉杜毬見台の探偵ー』階知彦

青春ミステリ」という言葉は魔法だ。
その単語を耳にするだけで、もう我慢ができなくなる。
それが学校を舞台にしているなんて聞くと、ページをめくらなければいけないという強迫観念すら感じてしまうのである。

階知彦の『火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵―』はタイトルと表紙を見ただけでもわかるのだが、
そんな魅力がぎゅっと詰まっている、と言いたかったのだが……。

隣の教室で人が死んでる

学園ミステリの流行りは「日常の謎」だが、本書では殺人事件が起きる。
それも堂々、主人公たち新聞クラブの隣の教室で起こるのだ。

物語は主人公である植里礼菜の過去から始まる。
彼女はある1つの嘘がきっかけで、フィクションを受け付けなくなってしまったのだ。
そのためフィクションのない事実を伝える新聞に心を惹かれる。

高校に入った植里礼菜は、ニュースを見つけるのが得意という幡東美鳥に誘われて新聞部に加入する。
創刊第1号の記念すべき1面は、

2階建ての駐車場、今夏ついに着工へ
講師館跡地に収容台数約300台
自転車通学者待望の救世主現る!

に決まった。

400名程度が自転車通学者をする泉杜高校では、「大規模な駐輪場施設の新設が急務」と言われていたのだが、資金や敷地の面で計画がなかなか進行しなかった。そんななか、最寄りの駅で大規模な自転車将棋倒し事故が発生して入学予定の生徒が怪我をした。さすがに対策を立てなくてはいけなくなり、寄付金を募ったが集まりが芳しくない。
そんなときに「講師館を解体してその跡地に駐輪場を作ることを条件に、その費用の一部として一千万円を寄付する」という主旨の手紙が同窓会長と学校長宛に届いたのだ。学校はこの話に乗らないはずがなく、具体的な動きに向けて本腰を入れて着手する準備を始めたという。

火曜新聞クラブは何度も取材や裏取りを重ねて、それを事実だと判断した。寄付者Xの正体は分からなかったものの、大スクープだった。

意気揚々と書いた記事が印刷され、残すは校正と発行のみとなった時、美鳥の兄であり学校の評議員を務める新聞部員、麻人から1面を差し替えるようにという指示があった。どうやら顧問の栗崎サエリ先生からの指示であるらしく、Xが寄付をするのを取り消したというのだ。

なぜ寄付を取り消したのか。
サエリ先生はもしかすると有島先生が何かを知っているのかも知れないという。というのも有島先生が「新聞に気をつけたほうがいいですよ」とサエリ先生に告げたというのだ。
有島先生に聞こうとする新聞部員たちだが、有島先生は出勤していないという。
サエリ先生のかけた電話は、隣の部屋でくぐもった着信音を知らせた。

不思議に思った部員たちは隣の部屋に行くが鍵がかかっている。事務室で借りた鍵を開けると、そこには有島先生の死体が座っていた――。

泉杜毬見台の探偵

本書の作中に出てくる探偵、御簾真冬は泉杜毬見台団地に住んでいる高校1年生で泉杜毬見台団地について詳しく、美鳥が新聞の2面に載せる移動図書館について調べているときに出会った。
今回の事件には泉杜毬見台団地の学生が関わっていることから真冬も捜査に関わることになる。

この泉杜毬見台団地というのが本書のひとつのキーワードとなる。礼菜がフィクションを嫌いになった理由もこの団地に関係する。
それも大筋の事件と絡み合うように後々明らかになるのだが――。

――、探偵の話、御簾真冬だ。
そんな彼の捜査方法がアガサ・クリスティの書く探偵、ミス・マープルとそっくりなのだ。

ミス・マープルの特徴は、

起こった出来事もしくは話された内容を、自身の経験、特にセント・メアリ・ミード村で過去にあった出来事に当てはめることで推理をするという点

それに比べて御簾真冬の推理は、

御簾君は泉杜毬見台団地に起こった出来事を引き合いに出して相手の素性や行動の分析をする

と2人とも過去のできごとを引き合いに推理をする。

ただどこか本書の探偵が嘘くさいのは、ミス・マープルに比べて年齢が若いからだろうか。ミス・マープルの引き合いに出される経験に比べると少し信憑性がかけるように感じられる。

火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵―』は学園、ミステリ、青春、キャラ、と言ったヨダレの出るような単語が揃っているのだが、推理から逆算して作られたような無機質さを感じられた。推理に登場人物が踊らされているようなのだ。

そういった意味では期待はずれであったが、ライトなミステリなので、「青春、学園、ミステリ」と言った単語が琴線に触れるのであれば読んでみてもいいかもしれない。

4.5

大スクープを摑んだけど、殺人事件の謎を解かないと水の泡!? 新聞作り命の女子高生コンビと銀髪碧眼の男子高生探偵が謎に挑む

エルキュール・ポアロに次ぐクリスティ作品の代表的な主人公であるミス・マープルの作品はぜひ読みたいところだ。

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