《随時更新中》夏に読みたい本をまとめました

色んなことが面倒になった時に読んでほしい桂望実の書く再生の物語『僕とおじさんの朝ごはん』

本の感想
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【書評】「食べ物」が登場する話に悪い話はない『僕とおじさんの朝ごはん』桂望実

正直、本書手に取ったのは全くの偶然だった。それは良い意味に言い換えれば運命だったのかもしれない。

本屋でたまたま手に取り、「食べ物」が登場する話に悪い話はないと思い会計を済ませた。

私は背表紙であらすじを確認するということが少ない。基本的に作家買いをする癖だろう。
そのせいで読み始めてすぐに驚くことになった。

「いえ。ショートドラッグって言われている、死ねる薬」

タイトルから「ほんわかストーリー」を想像していただけあって、勝手に騙された気持ちになる。

楽に死ねる薬をください

本書の主人公 健一はフリーでケータリングをしている。

ケータリングとは、顧客の指定する元に出向いて食事を配膳、提供するサービス業のこと。

その仕事中に、ケータリングの仕事をしている男が、楽に死ねる薬を売り歩いているという噂を耳にする。

耳にするというか、その張本人だと思われ、女性に尋ねられたのだった。
女はそれからなぜ彼女が楽に死ねる薬を求めているか話し始めた。
健一はその話を興味もなしに聞き、特に感想も言わない。
――、彼は何に関しても面倒くさがりだった。

それから物語はいろんな視点から描かれた、細切れのシーンを紡ぎ合わせるように進んでいくことで、健一の自分語りだけでなく、色んな人が見てるそれぞれの健一が書かれていく。

  • ケータリングの仕事にも心をこめていないこと
  • とにかく力を抜いて生きていること
  • その姿勢が好ましく思われることもあること
  • たまに手抜き仕事が見抜かれていること

――、そして彼が何事にも手を抜くのには、過去のできごとが関係しているということ。

前半で丁寧なまでに説明される健一の面倒くさがりな性格が、徐々に変わっていくのはひとりの少年との出会いからだった。

少年との出会い、そして再生

少年は英樹といい、未だ病院の外で暮らしたことがなかった。彼は小さいときから手術を繰り返し、今まで生きてきた。

そんな彼がであったのは、リハビリのために通院しているくせに、だらだらとやる気なさそうに動く健一だった。

英樹はそんな大人らしくない健一に興味をいだき話しかけた。

健一はやっぱり変わっていて、周りの大人みたいに英樹に対し、頑張れとかそういった言葉をかけなかった。
手術がつらいというと、「辞めちゃえよ」と言う。英樹はその気楽さを好ましく思った。

そんな英樹は健一の料理が好きになった。

すぐに甘さが口に広がって、連動するように胃が動き出すのがわかった。

健一はそんな英樹のためにいろいろ考え、料理を作るようになる。
今まで面倒なことはせず、形さえキレイに見えればよかった料理の中身にもこだわった。英樹の口に合うような料理を作るようになった。

英樹との交流で徐々に変わっていく健一の考え。――、そしてそれは周りにも伝わっていく。

そんななか、英樹はある決断をする。

「僕の命は僕のものだよ」

随所に差し込まれたショートドラッグの意味、
健一の過去、そして英樹下した決断とは?

面倒くさがりなおじさんと病気の英樹、そして多くの人が交流し、変化していく心温まるストーリー。

本書を閉じた時、
「ほらやっぱりね、食べ物が出てくる話に悪い話はないないんだよ」と自分て呟いて頷いた。

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