《随時更新中》夏に読みたい本をまとめました

青春小説と推理小説が良い心地に融合した『流星の下で、君は二度死ぬ』藤石波矢

本の感想

【書評】藤石波矢が書いた『流星の下で、君は二度死ぬ』の感想は?

何度でも言うが、「青春学園ミステリ」という言葉を聞き、心が躍らないわけがない。

予知夢という運命に立ち向かう

本書の主人公 みちるは過去の火災で父を亡くしている。
それも逃げ遅れたみちるを助けにきた父を目の前で亡くしていた。

以降、みちるは“予知夢“を見ることがあった。

  • 1回目は担任の死
  • 2回目はあけぼの工場のおじさんの死
  • 3回目は祖父の死

その映像はひどく曖昧だが、「死」だけは確実に訪れた。

小学生だったみちるはそのことを、家庭教師だった親戚の土岐に話すと、彼はその突拍子もない話を信じ、予知夢の結末を変える協力をしてくれると言った。

それから数年、高校生になったみちるは再び予知夢を見る。
ただその予知夢では、舞台が通っている屋上であることは分かったが、誰が死ぬのか判断ができなかった。
これじゃ、助けることできないと焦るみちるに、今回の予知夢はいつもはない「リピート」があった。
そのリピートでは、曖昧な映像の中に、現在は用務員となった土岐の姿があった。

みちるは予知夢をの結末を変えるべく行動する。
そして――、
訪れた「死」は、確かに予知夢とは違った結末になったのだが……。

青春小説と推理小説、その間

派手で綺麗な装丁に着飾ったタイトル、思わず心がうずいた。
それに「青春学園ミステリ」。
もう読まないという選択肢はない。

青春小説としては、高校生らしい無駄な会話や、無駄な笑い、――、さらにカーストまで盛り込まれ、それぞれが思い悩み、近視眼的な思考をする点では思春期をうまく描いているのだが、「アオハルかよ」っといった具合ではない。

それはそのはずで、本書では殺人事件が起きているのである。

ただこれもまた推理小説といった具合ではない。
推理小説のように淡々と状況説明がされるわけでもなく、アリバイのあげだしもない。
さらに状況的に言えば、密室殺人なのだが、推理小説のように鼻息が荒くならず、密室に対してもクールな対応が行われる。

悪く言えば中途半端なのかもしれない。
「青春小説」「推理小説」、それぞれに振り切っていない。

だが、その距離感がとても心地よかった。
歯が浮くような「青春小説」じゃなく、理屈にうんざりする「推理小説」じゃない。

だが、それぞれの必要な部分は含まれている。

青春小説、推理小説のちょうど中間に位置し、それぞれが苦手な人も好きな人も楽しめる作品になっている。

さらに本書の魅力は、「予知夢」というミステリとしては特異な要素が含まれていること。

これこそミステリファンからは文句が出、本格ミステリファンからは罵倒を浴びさせられるかもしれないが、
起こるべき犯罪に向っていくシーンは、思わずページをめくる手が逸り、指同士が絡まりかけるほどだった。

――運命を変えようとすることで、殺されなかったはずの人が殺された?
進むにつれて明らかになる事件の概要、そして過去。事件に隠された悲しい真実。
はたしてみちるは運命に抗い、運命を変えることはできるのか。

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