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【書評】分かっているのに『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

本の感想 本の感想

くるくるくる、そろそろ来る!
その時が来るのを楽しみにページをめくる。
ページ数が少なくなっていることを視覚的に確認する……、きたっ! その瞬間――、私は認識を改め直す必要が生まれる、世界が崩されていく感覚に陥る。
朝井リョウの「世にも奇妙な君物語」はそんな小説だ。


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◇「世にも奇妙な君物語」を選んだ理由

正直言って朝井リョウはあまり好きじゃない。小説家なのに「イケイケ」であるし、テレビだって沢山でるし、小説家らしくない。
さらに言えば大学在学中に小説家デビューしたことも羨ましくって仕方ない。羨ましくて仕方ないので、やっぱり好きになれない。
「桐島、部活やめるってよ」「何者」は本当に面白かったけれど、それがまた悔しくてやっぱり好きになれない。
そんな意地を張っている(もう正直に言うコトにする)私がこの本を手にしたのは、表紙に惹かれたせいであった。

表紙に書かれている、遊園地にある回転ブランコ。
私はこれがとても苦手であるが、見ると乗りたくなって仕方がない。基本的に乗らないのであるが、乗ってみるとやっぱり後悔する。なんだか不安で仕方がないのである。自分自身はしっかりとしているのに、大地が傾いている。それは今までの世界をひっくり返されるような不安を覚えるのである。
そうしてこの表紙と「世にも奇妙な物語」が妙にマッチするのである。
現実にありそうで、なさそうで、そうして始終不安を抱えているあのストーリーと実に会うのである。しかもその見慣れたタイトルに「君」という異分子が紛れこんでいる。
ここまで来るともう私の好奇心は我慢できない。

◇著者:「朝井リョウ」情報

岐阜県垂井町出身。岐阜県立大垣北高等学校、早稲田大学文化構想学部卒業。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビューし、2012年には同作が映画化。2012年、『もういちど生まれる』で第147回直木三十五賞候補。2013年、『何者』で第148回直木三十五賞受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少となる。直木賞受賞後第一作『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。2016年、英語圏最大の文芸誌「Granta」日本語版でGranta Best of Young Japanese Novelistsに選出される。

◇「世にも奇妙な君物語」抜粋

今年二十五周年を迎えたテレビドラマ、「世にも奇妙な物語」の大ファンである、直木賞作家・朝井リョウ。映像化を夢見て、「世にも奇妙な物語」のために勝手に原作を書き下ろした短編、五編を収録。

異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに―では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。

◇落ちがくることは分かっているのに

冒頭で私は朝井リョウが小説家らしくないと書いたが、この本を読んでその認識を改める必要があることを知った。
私の想像する小説家とは、畳の上で煙草を燻らせて難しい顔をしている――、いわゆる文豪であるが、それだけが小説家ではない。
小説とは文学と言う学問的な1面もあるが、それと同時に読者を楽しませるというエンターテイメントという1面も持ち合わせている。あるいはこちらの方が小説家としては必要な側面かも知れない。
朝井リョウは読者を楽しめせることが非常にうまい。それは「桐島部活やめるってよ」「何者」でもそうであった。「桐島」では学生のみずみずしさやスクールカーストなど人間模様を書き上げたうえで、最後まで読むと分かる仕組みがあった。「何者」では学生の就職活動やSNS活動をリアルに取り上げて、作中に隠した仕掛けが最後明らかになった時は驚きを隠せない。
この物語もまた同様である。
それぞれ、現代の人間模様を書き上げたうえで、最後には衝撃の結末が待ち構えている。

現代の人間模様を楽しんでいると……

シェアハウしない
「テラスハウス」で話題になった。シェアハウスについて。
リア充裁判
SNSによる自己アピールについて
立て! 金次郎
モンスターペアレントの理不尽な要求
13.5文字しか集中して読めな
アクセスを稼ぐために誰かが傷つくことも気にしないネット記者
脇役バトルロワイアル
最終話。是非読んでみてください。

朝井リョウほど現代社会をリアルに書き上げる作家はいないと私は思っている。
読んでいて「あー、こういう人いるわ」「こういうことあるわ」と何度思ったことか。
「世にも奇妙な君物語」、タイトルから分かるように最後にどんでん返しが来ることは分かっている。それを当然待って読んでいるのだが、待っている間もこの物語は私を退屈させなかった。

リアルな現代社会を読みたい方、どんでん返しが好きな方、ぜひこの作品を手に取ってみてください。

◇「朝井リョウ」のおすすめ本

桐島部活やめるってよ

学校でのリアルなスクールカーストについて書き上げたデビュー作。
第22回小説すばる新人賞。

「何者」

現代の就活、SNSに依存した人間模様を描いた作品。
第148回直木三十五賞受賞作。

◇この本を読んだひとにおすすめ本

「廃墟建築士」三崎亜紀

ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。

現実か非現実家、境界線でふらふら進む物語という点では、「世にも奇妙な君物語」に似ているかもしれない。

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